社会
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金曜の夜、テレビのチャンネルを回していたら、BS朝日で見覚えのある顔がアップで映し出された。番組タイトルにも名前が入っている町山智浩氏だ。米国事情に通じたコラムニスト、映画評論家として活躍中なのは知っていたが、顔を見るのは三十数年ぶりのこと。髪に白いものが増えたが、人懐こい笑顔は昔と変わらない。
彼との縁は、1980年代から90年代にかけて「週刊少年マガジン」に連載されて爆発的人気だったバイク漫画『バリバリ伝説』がきっかけだ。当時、若者向け単行本の編集に従事していた私は、この漫画のキャラクターを活用したバイク本を手掛けていた。巻末に作者しげの秀一氏へのインタビューを収録することになり、池袋のふぐ料理店に作者を迎えた。
編集実務の委託先の制作会社がインタビュアーに起用したのが町山氏で、まだ現役の大学生、早稲田大学漫画研究会のメンバーだった。しげの氏は年下の彼が相手で気楽だったのか、いろいろな話を披露してくれた。最初は「大丈夫かな」と心配した私も、いつの間にかヒレ酒を飲み始めていた。
大学卒業後はJICC出版局(現・宝島社)に入ったと聞いていたが、その後、結婚祝賀会の案内状が届いた。出席したかったが、来るのは一回り以上年下の人ばかりだろうと思い、遠慮することにした。
「宝島」や「別冊宝島」の編集部を経て、洋泉社に出向し、「映画秘宝」の創刊編集長に。お騒がせを含め、数多くのエピソードを残した名物編集者だったようだ。退社後の1996年、米国に活動拠点を移し、米国の文化や政治について書き続けてきた。「週刊文春」のコラム『言霊USA』は現在も連載中で、続々単行本化されている。
彼は米国政治を書いても、映画や音楽の話をふんだんに盛り込み、旺盛な好奇心とフットワークでさまざまな米国民の考えや行動を臨場感豊かに伝えている。ジョークや茶々、合いの手も入る。大手マスコミの特派員や学者など米国政治の専門家とは一味違ったアプローチで読者を楽しませる。
映画評論のほうでも著書は多い。『最も危険なアメリカ映画』(2016年 集英社インターナショナル刊)と『今のアメリカがわかる映画100本』(2017年 サイゾー刊)を読んだが、スクリーンの裏の政治的社会的事情に真剣に切り込んでいて、日本人にはわからない意外な背景が見えてくる。
米国大統領選挙は2か月後に迫った。町山氏はトランプ大統領には一貫して批判的だが、過去の大統領選挙でもトンデモ候補が多数いたことを実例をあげて紹介している。しばらくは彼のレポートから目が離せない。
山田 洋
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