文芸広場
俳句・詩・小説・エッセイ等あなたの想いや作品をお寄せください。
人が住まなくなった家があります
広い敷地に家が三棟もあり
家族が住んでいましたが一人去り二人去り
今は最後の一人が老人施設に入りほぼ留守です
郵便箱は口を開けたまま
時々木の葉や花びらが舞い込みます
広い庭には季節毎に花が咲きます
植物だけは何処にも行かずお留守番です
ひとしきり梅が咲き、散りました
今は躑躅が真っ赤に咲いています
土の庭の世界は昔と同じです
蟻やトカゲがしきりと歩き廻り
アリジゴクが獲物を狙って息を潜めているでしょう
相変わらず訪れるのは蝶や野鳥です
夕方になると玄関に灯がともります
銀座の灯の始めはガス灯です
暗くなるとガス灯がともり朝方に消えたのは
「点灯夫」が消して歩いたからです
人が住まなくなった家の玄関に灯がともるのは
自動点滅器のせいです
風も無いのに花が揺れているのは誰かが来ているからです
鳥や人が来ています
・・・花はあの世も同じです・・・
花影から昔の人が手を振っています
ここは百年前は深い松林でした
夜になると今も屋根の上を月が通ります
五千年前 すぐそこまで海がきていました
天気の良い日は幻のカモメが弧を描いて帰ります
山上村人
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