なでしこ便
女性ならでは眼コミ、口コミ、スパイシー語録
神田神保町は本とカレーの街として知られている。この街の「キッチン南海」(本店)は、とんかつ好きの私にとって憧れの店であった。昼に食べるカツカレーは特にモチベーションが上がるので、いつかは昼に「キッチン南海」名物の黒いカツカレーをと願っていた。後に念願は叶い、味と量、共に満足することが出来た。それからというもの、神保町はすっかり黒いカツカレーの聖地となった。
「キッチン南海」は、昭和41年の創業以来、ボリュームのあるメニューを手頃な価格で庶民に提供し続けてきた。名物の黒いカツカレーはどす黒くはなく、常連客一人一人の悲喜こもごもの結晶のような、深く熱い黒褐色をしていた。他の、空腹を満たしてくれる頼もしいメニューたちも味が良い。そして何と言っても店そのものの味わいに惹かれる。飾り気のない老舗店の活気には、得も言われぬ奥深き風情があり、後を引くのだ。
しかし今年の6月、コロナ禍、更にはビルの老朽化に伴い、「キッチン南海」は惜しまれながら約半世紀にも渡る歴史の幕を閉じてしまった。必ずまた行きたかった店であったため、ニュースを知った時は、ひたすら寂しかった。心地よい空間を提供し続けてくれた店にも、時の流れの中で、少しずつ少しずつ何かが起きていたのは当然だ。しかし、何が起きていたのかなど思い及ばぬほど夢中になれたこと。それはそれで幸せというものだったのだろう。
気になる「キッチン南海」のその後であるが、現在では、のれん分けというかたちで、東京を中心に各店舗で営業を続けている。埼玉では、川口市(西川口)の「キッチンニュー南海」が引き続き営業中である。
のれん分けされた店舗にも足を運び、再び昼に黒いカツカレーを注文することが当面の目標だ。
葉桜こい
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