社会
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ミャンマーの軍事クーデターや緊急事態宣言の延長などのニュースの陰に隠れがちだったが、2月1日に民主主義の信頼を揺るがすような事態が愛知県で明らかになった。同県の大村秀章知事の解職請求(リコール)に向けて提出された署名のうち、83%に不正の疑いがあると県選挙管理委員会が調査結果を発表したのだ。
一昨年8月に開かれた国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」は過去に公立美術館などで展示を断られた作品をあえて並べ、議論を巻き起こそうと試みた。皇室を扱ったものや慰安婦をモチーフにした少女像などもあり、開幕の翌日に視察に訪れた名古屋市の河村たかし市長が激しく批判したのだ。事務局には「企画展を中止しろ」という電話やメールが殺到し、内容もどんどんエスカレートし、「ガソリンを持っていく」という脅迫も届き、開幕から3日後、芸術祭のトップ、大村知事が企画展の中止を発表した。
知事は「税金でやるからこれをやってはいけない」という意見に異を唱え、「公権力を持ったところだからこそ、表現の自由は保障されなければならない」としていた。この時の知事の姿勢に不満をぶつける形で、美容外科の高須克弥院長と河村市長が主導して知事リコールへの署名活動となった。昨年6月に高須院長が行った記者会見には、百田尚樹、有本香、竹田恒泰、武田邦彦と右派系各氏が顔をそろえた。どうにも分かりにくいのは、大村知事は元・自民党国会議員、河村市長は元・民主党国会議員で、かつては盟友関係でもあったということだ。
大村知事の解職を問う住民投票の実施には約87万人の署名が必要なのに、集まったのは43万人余にとどまり、そのほとんどが無効だった。筆跡もペンの太さも全く同じ署名が多数出てきたのだ。高須院長は「真犯人を割り出し、罪を償わせる」、河村市長は「私は被害者。怒りに震える」と言っているものの、自分たちの軽率さがこの事態を招いたことへの反省はない。
このリコール運動には大阪府の吉村洋文知事も支持表明していた。大阪以東でも勢力を広げたい日本維新の会が右派を取り込もうとしたとの見方もあるが、大阪都構想を巡る住民投票でつまずくなど迷走続きだ。
署名の偽造に対して愛知県選管は刑事告発を検討しており、8割超の無効署名が一昨年の騒動の内実を明かすことになるかもしれない。
山田 洋
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