社会
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没後26年を迎えたばかりのアジアの歌姫テレサ・テンさんは、日本でも大活躍をされた。彼女は正に、音楽は国境を越えるということを体現してみせた人だ。
テレサさんは歌に限らず、話し言葉にも好感が持てた。難しき日本語の中から一つ一つ丁寧に言葉を選んで、その時々の想いを語ってくれたものだ。異国語であった日本語にも、テレサさんならではの、たとえがたい心が隅々にまで宿っていた。時には、ご自身にとって苦痛を伴う内容をも真摯に受け止め話してくれたテレサさん。彼女は国と国との壁のみならず、己にも打ち克ちながら、懸命に生きた。結果、多くの人々の痛みを癒す力を得たのだろう。
今年3月。菅首相は、バイデン大統領との初の首脳会談に先立ち、第一回目のワクチン接種を行なった。接種後の感想は「そんなに痛くなかった」であった。もちろん「国民の皆さんも、安心してワクチン接種をして下さい」というメッセージであったのだろう。しかし、期待されていたワクチンに関しても、またまた混乱が起こってしまった。接種した首相よりも、まだ接種出来ていない国民が痛みを感じるようなワクチンであってはならない。
繰り返し発せられる政府からのメッセージは、ことごとく薄められた虚しいものが多く、本当に母国語を使っているのか疑わしくなることがある。
何も菅首相に、テレサ・テンさんほどの情感を持て、とまでは言わない。しかし、国を跨ぎながら生き抜いたテレサ・テンさんから学ぶ点は多々ある。本気に勝るものはないのだ。国民の痛みを和らげるためにも、任期を無駄にせず、もっと有意義な熱量に基づいたメッセージをと切に願う。
葉桜こい
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