社会
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大相撲の大関・朝乃山(27歳)が先場所前に何度もキャバクラに行ったことが明らかになり、日本相撲協会が定める新型コロナウイルス対策のガイドラインに違反として6場所出場停止と6か月の50%報酬減額の処分が科された。協会の事情聴取に対し、虚偽の報告をしたことが異例の厳しい処分となったようだが、これでは1年後に番付が三段目まで下がってしまうはずだ。
この問題にともない、朝乃山の育ての親である先代高砂親方(元大関・朝潮)の「不適切な行動」も浮上した。昨年7月以降、力士を同席させて知人との会食を繰り返し、昨年末には朝乃山も同席させたというのだ。
先代親方は昨年11月に65歳の定年を迎え、部屋の師匠を元関脇の朝赤龍と交代した後も、部屋付き親方として部屋に住み続け、新師匠は自宅から通っていたことまで明らかにされた。先代親方は退職願を提出し、受理された。彼は2007年にも、弟子の横綱・朝青龍が夏の巡業を休んで、帰国したモンゴルのイベントでサッカーをしていたことがばれて、師弟そろって謝罪会見に追い込まれた。以後、いろいろ問題ありの師匠と見られていたようだ。
私は一度だけ親方と居合わせたことがある。高砂親方になって間もない頃で、場所は銀座のクラブ。事業に成功して羽振りのよい友人に誘われて入った店に親方が後援者とおぼしき人とやって来たのだ。誰かが歌い始め、うるさいなと思って見たら親方だった。他に歌う客はいなかったので、マイクを独り占め状態で歌い続けていた。
場所中ではなかったはずだが、「相撲の親方って結構な御身分」と思った。その後、朝青龍騒動が起こり、親方業は甘くないことを知らされた。
親方と歌ということではもう1つ思い出すシーンがある。朝潮のライバルでもあった琴風が引退して尾車親方になった数年後、彼の後援者が主催するパーティーがあって、本人も出席した。司会者は親方に『相撲甚句』をリクエストした。すると親方は「今は場所中だから」と固辞した。現役の大関時代に歌手として『まわり道』をヒットさせた実績を知る会場の人たちからの強い要望もあり、最初のほうだけを歌ったが、けじめを重んじる姿勢は印象的だった。
そして今回の朝乃山を処分した理事会では、尾車親方がコンプライアンス部長として処分意見をまとめる立場にあった。今回の事態は私が出会った2人の親方の印象とどこかでつながる思いがする。
ただ、先代高砂親方の『親方はつらいよ』(文春新書 2008年刊)を読むと、この人の憎めない人柄と親方という仕事に対する柔軟な考え方に同調できる部分は多い。朝青龍騒動についてもマスコミ報道にはない事実を明かし、彼を優しくかばっている。朝青龍も「親方、本当に申し訳ない」との一文を寄せ、親方への謝意とお詫びを繰り返した。
さらに親方は「また別の横綱を育ててみたい」と明言していた。その夢が10年余で朝乃山により実現間近だったのに潰えてしまった。処分はきつ過ぎるとの意見もあるが、朝乃山の捲土重来を祈りたい。
山田洋
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