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外交評論家 加瀬英明 論集
アメリカや、西ヨーロッパにも、作為的に見出しを大きくしている新聞がある。これらは、ニューヨークであれば、デイリー・ニューズとか、ロンドンならデイリー・エクスプレスといった大衆新聞である。日本の新聞の見出しは、大衆新聞の手口である。発行部数はデイリー・ニューズが二百万部、デイリー・エクスプレスが二百六十万部である。これに対して世界で高級紙といえば、ニューヨーク・タイムズが八十万部、ワシントン・ポストが五十万部、現在、労使紛争がこじれて休刊中であるがロンドン・タイムズが三十万部、フランスのル・モンドが四十万部、西ドイツのフランスフルター・アルゲマイネが三十万部といったように小さなものである。
新着のニューヨーク・タイムズをとってみると、四月十二日の第一面には見出しは八つある。このうち三つが大きいが、それぞれ十一・五センチ×二・五センチである。四月十一日をとると、一面の見出しは九つで、やはり大きいのがそれぞれ十一・五センチ×二・五センチだ。そのうえ、この大きな見出しは、みな二行である。毎日、こんなような調子である。
ワシントン・ポストはニューヨーク・タイムズを見慣れていると、見出しがいささか大きいと感じられる。三月二十一日をとると、トップのニュースはVepco’s Rate Boost Raises Residential Bills by 11 Percentと三行で組まれている。Vepco(バージニア電力会社)が住宅用の電気量を十一%値上げすることを認められたというのである。このすぐ下に小見出しがあって、Profits Soared At a 44% Rate at End of 78というから、七八年末には同社の利潤が四四%増えたということである。やはり三行に組まれている。
大見出しのほうは、十一・五センチ×5センチである。下の見出しのほうは五センチ×三センチだ。この日のワシントン・ポストで次に大きな見出しは、Begin Rules Out Palestinian state On West Bankである。イスラエルのベギン首相がヨルダン川西岸地区に、パレスチナ人国家を建設するのを拒否したというのだ。やはり三行で組んであった。十一・五センチ×五センチである。
これを先ほどの四月十三日の朝日新聞の朝刊の見出しと較べてみると、トップの見出しは「政府調達 譲歩対案早急に詰め」が横に一行で組まれ、右下に題字にそって「首相、外相らに指示 訪米前に決着の方針」という見出しが二行になって、縦に組まれている。それぞれ二十センチ×三センチと十七センチ×四センチである。毎日は「100万ドルは日商工作資金 事務所経費238万ドルの流れ解明 地検 ダ社に上乗せ請求 RF4E売り込みに使い」がそれぞれ縦と横に組まれ、横の部分が二十二・五センチ×三センチ、縦の部分が十九・五センチ×七センチである。
私の手元には、またスイスで発行されているノイエ・ツーリッヒャー・ツァイツングの三月付のものが、数部ある。この日刊紙の発行部数は十万部以下であるが、ヨーロッパでは高級紙としてスイスの外でも広く読まれている。見出しといったら、ニューヨーク・タイムズの場合よりも、もっと小さいものである。
また外国の高級紙には、ノイエ・ツーリッヒャー・ツァイツングや、ロンドン・タイムズ、フランスのフィガロのように、一面には写真を載せないとか、全ページを通して写真を全く使わないという新聞がある。写真は大衆紙や、雑誌で見ているだろうから、高級紙の読者には必要がないというのである。このような新聞は、落ち着いて読むことができる。
個性の時代 ミーイズムのすすめ 6章 新聞にみる「センセーショナリズム」
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