トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 教育を正すことは家庭から
外交評論家 加瀬英明 論集
私たちは今でも西洋人を近代的生活の模範としているが、西洋人は意外と保守的である。毎日の生活に、これだけはどうしても譲れないというルーティーンがある。きれいに掃除された、安らぎに満ちた、美しい家に住まねばならない。食事もきちんとテーブルをつくって、お父さんもいっしょにちょっと儀式めいて食卓を囲む。子供の受験のために主婦が家事から手を抜いたり、タローちゃんは塾だから、食事は九時などということはありえないことだ。あれやこれで、無数の常識の歯どめがあって、市民は正気で、平和な生活を守って送っているのだ。
この点、今日の日本の家庭は無秩序で、まったく無防備である。皮相な西洋化(あるいは近代化)は、日本の家庭から、伝統的な生活文化を失わせてしまった。家庭から日本の精神が失われてしまったのは、民族の将来のためには、大きな悲劇だといわねばなるまい。いつのまにか、生活から、規律や尊厳が消えうせてしまったのだ。
教育論が盛んであるが、教育問題をけっして学校教育や、教材や、塾に限ってはなるまい。これらは子供の教育のごく一部でしかすぎない。子供たちを受験塾と、母親の無法地帯から引っぱりだして、社会全体を教育の場として見直すことが必要である。社会の基本は家庭である。学校は社会の一部分でしかない以上、教育を正すことは家庭から始まらねばならない。
それに日本では、勉強は知的な錬成のために行われているのではない。いったん入学試験が終わってしまうと、おつきあいの情実で卒業させてくれる。ぬるま湯のような大学ばかりということになっている。このような大学では、ほとんど何も身につかない。これだけ全国民が受験に膨大なエネルギーを費やしているのに、これほど大学生の質が低い国もない。
そのうえ皮肉なことに、青少年たちに規律を与えるものとして、受験競争しかない。いったい受験をとってしまったら、何が残るというのだろうか。私たちはいつの間にか、このような寒々しい国や、家庭をつくりだしてしまった。
バックナンバー
新着ニュース
- エルメスの跡地はグッチ(2024年11月20日)
- 第31回さいたま太鼓エキスパート2024(2024年11月03日)
- 秋刀魚苦いかしょっぱいか(2024年11月08日)
- 突然の閉店に驚きの声 スイートバジル(2024年11月19日)
- すぐに遂落した玉木さんの質(2024年11月14日)
特別企画PR