トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 精神的虚弱の原因はマザコン
外交評論家 加瀬英明 論集
母親はまず、息子にあまり構うべきではない。子供が二、三人しかいなくても、七、八人持っているつもりでいるべきだ。それに母親は子供のことだけでなく、他に興味でも、生き甲斐でも、日常関心をそそげるものを持つべきである。潑刺とした自分の生活を持つことによって、できるだけ完全燃焼することだ。そうすれば、有害な排気ガスもあまりでないはずである。夫もそうするように協力すべきであろう。
悪いことに、今日の母親は生半可な教育を受けている。中途半端な大学卒が増えている。ある程度以上の学識があれば、子供に教えたうえで、おだてるだけの余裕を持てるが、生半可だと子供と張り合ってしまうことになる。よい母親はよほどしっかりとした学識があるが、まったく無学文盲であるかの、どちらかが望ましい。
もっとも、子供をハイジャックさせるような母親の存在を許している父親も、いってみれば欠陥夫だ。
日本では歴史的にいって武士階級が父系社会であり、商人階級が女系社会であっただろう。武士は男性社会であった。戦士の家系であるから、父親が息子を鍛えたものだった。
日本では男同士のつき合いが多すぎるので、父親たちが外で遅くまで飲み食いしたり、麻雀をしたり、家に不在であることが多い。そのうえ忙しいふりをして、家庭を妻に任せてしまうので、女に家庭をハイジャックされてしまうことになる。このような家庭からは、男らしい独立心に富んだ人間は育たないはずである。自主性を欠いた、未来の窓際族をつくることになってしまう。
それに子供に受験勉強ばかり強いていると、家庭を密室にしてしまいやすい。〝モーレツ社員〟である父親が家庭を構う時間がないのと同じように、〝モーレツ受験生〟である子供たちも健全な生活を営む暇がない。子供は人生の他の面に触れることができないために、精神的に虚弱になってしまう。小学校から受験戦争が始まるというのは、どう考えても異常なことである。
そういえば最近、斉藤茂太さんの『母子関係』という本を読んで大いに啓蒙された。光文社のカッパ・ブックスで今年はじめ刊行されたものだが、「マザーコンプレックスからの解放」という副題がついている。
このような問題に関心を持っていたら、教えられるところが大きい小冊だ。
斉藤さんによれば、子供がおかしくなって学力が低下したり、非行に走ったり、自殺するのは、「その大きな原因がマザーコンプレックスにある母子関係の歪みである」という。
「甘やかされて育った子供は、いったん欲求不満におちいるとそれをどう解消していいかわからない。いままでは、すべて母親が解決してくれていたからだ。苦しみに耐え、憤りを抑えるすべを知らないのである」というのだが、とくに息子を蝶よ花よで育ててはなるまい。
そして斉藤さんは「子どもを一人しか産まないつもりなら、むしろ産まないほうがいい」と勧めている。兄弟は兄弟喧嘩をしながら、「人間関係の基礎を学び、社会性を育んでいく」からである。
きっと二人というのも危険だろう。私は最近、建て売りのマンションのショールームをいくつか見たが、たいてい子供用の個室を二つつくっている。
個性の時代 ミーイズムのすすめ 8章「母親」としての女性
バックナンバー
新着ニュース
- エルメスの跡地はグッチ(2024年11月20日)
- 第31回さいたま太鼓エキスパート2024(2024年11月03日)
- 突然の閉店に驚きの声 スイートバジル(2024年11月19日)
- すぐに遂落した玉木さんの質(2024年11月14日)
特別企画PR