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外交評論家 加瀬英明 論集
先日、知人の息子さんの結婚披露宴に招かれた。
私は四十代に入ったところだが、友人はもうみな結婚しているし、その子供たちの代になるまでにはまだ暇がある。中途半端な齢であるというのか、結婚披露宴には久しぶりで出席した。知人の息子さんには、その席で初めて会ったがなかなか好ましい青年だった。大企業に勤めているということで、何人かの上役にあたる人々が新郎が前途有望な青年であると祝辞のなかで紹介した。
披露宴は、さまざまな趣向が凝らされていた。ウェディング・ケーキにナイフを入れると、台の下からドライアイスの煙が涌いたり、テレビにレギュラー番組を持っているという占い師が壇上で二人の相性を占ってみたりしたので、退屈しなかった。
私が驚いたのは、花嫁だけではなく、新郎までが色直しをしたことだった。はじめは和服姿だった新郎が白い上下の洋服に着替えてきたが、シャツというよりはフレアがついた女性のブラウスのようなものを着て、蝶ネクタイを結んでいた。靴まで、白い靴を履いていた。私は「はあ、驚きましたね。最近は男もお色直しをやるんですか」と、となりに座っていた友人(M氏はテレビの司会者である)に、とっさにいった。
すると、「いや、最近はみんなこうですよ。でも、これはいいほうですよ。このあいだは、スパンコールがついた上着を着ていたものがありましたからね」という返事が戻ってきた。
新郎は新婦の腕をとって、臆することもなく、スポットライトを浴びながら客席を巡って、メインテーブルへ戻った。歩いているところはちょっと芸能人か、『週刊明星』の表紙を思わせた。
それからしばらくの間、私は人に会うと新郎の色直しの話をした。すると新郎の色直しは、今では普通のことになっているらしい。「テレビの世代ですね」とM氏がいったが、どうも男性の女性化現象なのではないだろうか。というのは新郎が色直しをするようになったのは、新婦の要望によるものであるにちがいない。女の見栄のようなものだろう。
もちろん、私は知人の息子さんのことをいっているのではない。このようなことが一般化しているので、多くの新郎新婦があまり考えることなく、揃って色直しをしているのだろう。
このごろの若い男女をみると、どうも女のほうが貪欲であって、男のほうが逃げ腰のようである。栄養がよくなり、両親による束縛もあまりないうえに、避妊のための知識がひろまったので、セックス体験も自由になったからなのだろう。
他方、今日の若い男性は、みな〝お母さん子〟である。そして今日の母親たちにとってみれば、夫はあまり家にいないし、家にいたとしても通勤に往復時間もかかって、たいていダウンしているから、男といえば息子しかいないことになる。
家庭はすっかり電化されてしまっているし、3DKぐらいの広さに核家族が孤立して住んでいるのでは、家事といってもあまりない。家で客をもてなすこともない。そこで母親は息子にしがみつくことになる。幼いころから、女によって舵をとられることになる。
母親と息子のあいだには一種の取引が成立し、異様に密着するようになる。それに夫に失望している母親は、心の底で男を恨んでいるので、息子のほうもどこかで自分が男であることに対して罪悪感をいだくようになる。女によって舵をとられているので女に対して弱くなるし、男であることの贖罪意識が働いて、女の機嫌をとることが上手になる。
これでは、とても今日の貪欲な若い女性と太刀打ちできるような男性は、育たない。
日本を悪くしたものは多いが、核家族化と、2DKとか、3DKといった小さな住宅と、通勤にあまり時間がかかることと、女性週刊誌があげられるだろう。
最近の若い男性のファッションをみていると、泰平が続いているので派手になるのは仕方がないとしても、何か愛玩犬に着せる服に似ていて、男が女の〝ペット化〟したような気がする。
個性の時代 ミーイズムのすすめ 8章「母親」としての女性
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