トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 働く理由は「もったいない」
外交評論家 加瀬英明 論集
もっとも最近では、妻が夫と同じように外で働くというケースが増えている。統計を見ると女性の勤労者数は年を追って増加しているのとともに、平均年齢が高くなっている。一九六五年には九一三万人、二十八・一歳であったのだが、六七年には一〇〇四万人、二十九歳、七二年には一一二〇万人、三十一・四歳になり、七七年では一二五一万人、三十三・九歳となっている。パートで働く女性の数も同じように増えている。六八年に一一二万人だったのが着実に増え続け、七七年では二〇三万人となった。
女性勤労者のうち、六十五%が既婚者(離婚、死別を含めて)だが、こうやって数字をみてゆくと、豊かさが増大して生活が楽になってゆくのにしたがって、働く女性が増えていることがわかる。そのなかで妻が占める比率も大きくなっているから、もはや「共稼ぎ」といったような経済的に暗いイメージをあてはめることはできないだろう。
豊かになるにつれて働く女性が増えるというのは、おもしろいことである。それだけ女性の自立への憧れを強める効果があるのだろう。最近では家にいるだけでは満足せずに、外の社会に触れたいという願望が強まっているのだろう。それに、ことさら性的な関係を持つということではなくても、夫以外の男性とも会えるのだ。そういう動機から働きにでる女性が、多いにちがいない。
今日では夫の収入で暮らせないことはないが、「家にいてももったいない」という発想があるのだろう。最近は女性の給料もあがっているのだ。それに豊かになると、欲しい物も増える。そこで「共働き」(という言葉のほうがよさそうに思える)すれば、家のローンが払えるとか、ピアノが買えるとか、旅行できるといった計算が働くのだろう。
これでは家庭の地位が、大きく下落してしまう。家は暗いとまでゆかなくても、つまらないところにされてしまっている。「家にいてももったいない」という理由には、外で金を稼げるということと並んで、家に閉じ込められていては、自分が「もったいない」という疼きがあるはずである。
核家族化してしまっているうえに、大都会に出てきて暮していると住宅事情が悪いので、住居は小さい。家を掃除するとか、家具や調度品を磨くといっても、そのようなものがない。洗濯まで電化されてしまっている。客がやってくるわけでもない。あるいは夫の親と住んでいれば、シュウトメといっしょにはいづらい。
そのうえに、台所で大半の時間をゴキブリといっしょに過し、皺だらけになって、夫や、さまざまなことについて文句ばかりいっていた母親のイメージがある。ファッションとも、外のレストランとも無縁だった。
そこで、より充実した時間を持とうとして、働きにでる。そうすれば、もっと自分を主題とすることができるのだ。そのかわりに家事を能率的にこなすことを考える。その結果、子供たちにカタカナで書けるようなものばかり食べさせる。スパゲッティ、ハンバーグ、カレーライス、ラーメンといったものだ。もっとも外で稼ぐから、たまにはステーキを焼くかもしれない。
しかし、ほんとうは安い材料を使った料理のほうが、手間がかかるものだ。それに外で稼いだとしても、洋服や、靴など、どうでもよい無駄なものにつかってしまいやすい。そして大半の時間外へ出ているのは、その間、捨て児をしているようなものである。そのうちに夫や、子供からも拒絶されるようになってしまう。
いったい家庭とは、それほど惨めなところなのだろうか。それでは、もし外へ働きに出ずに家にいたとしても、夫や、子供を豚ぐらいにしか、みなしていないことになってしまう。養豚所の飼育係のようなものである。
家庭も大切にできず、不満を晴らすために外に働きに出たとしても、不満が癒されるものではあるまい。それだったら、もともと結婚しなければよい。
個性の時代 ミーイズムのすすめ 8章「母親」としての女性
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