社会
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自民党と旧統一教会との深い関係が明るみに出され、議席を得るためには犯罪集団みたいなところとも手を組む実態を見せられた。これは国政だけではなく、地方議員たちにも汚染が浸透しているはずだ。議員になるには世襲とか官僚出身、あるいは特定の支持組織が必要とされる。さらに選挙には多大な資金が欠かせない。こうして選挙民と議員との距離はますます広がっている。
このような代表制民主主義の欠陥を補うものとして、今、「くじ引き民主主義」が関心を集めている。この語は同志社大学教授で気鋭の政治学者、吉田徹氏の同名の著書(光文社新書 2021年11月刊)で世に広まった。
国民の代表を「くじ引き」で選ぶと言うと驚く人も多いはずだが、その原形は古代ギリシャのアテネで見られる。市民権を持つ18歳以上の男子による最高議決機関を通った提案を執行するのは、各地10部族からくじで選ばれた30歳以上の男性たちだった。15世紀のイタリアのフィレンツェ共和国でも政府の要職をくじ引きで選んだ。
このような数万人規模の都市国家と現代の巨大な国民国家を同列に見ることはできないが、選挙によって選ばれる代表を介した民主主義も、今に至って様々な形で欠陥を見せ始めた。機能不全になっている代表制民主主義を補足し修正するような形で、民主主義それ自体にイノヴェーションを起こし、その潜在力を発揮させるような方策こそがくじ引き民主主義だというのだ。
OECD(経済協力開発機構)の2020年の報告書は、素人が公的な意思決定に参加するという形が2010年以降に世界で急速に広がったことを示している。日本でも少なくない自治体で「市民参加条例」が制定され、無作為抽出で選出された市民による「市民討議会」が設置された。
また、ポピュリズムとくじ引き民主主義は同じ発生源を持つ。現在の政治形態や無能な政治家たちに辟易し、それを何らかの形で刷新しようという政治意識と政治行動においてである。ただ、前者はアウトサイダー的な政治家を頂点に押し上げ、トップダウンで政治刷新をめざすのに対し、後者はボトムアップ的な民意形成による刷新を試みる。
意外にも思えるが、司法の領域のほうがくじ引き採用が進んでいる。2009年に導入された裁判員制度は、一般市民から無作為抽出で選ばれた裁判員が、裁判官と合議して無罪・有罪を決める。検察官が事件を裁判にかけなかったこと(不起訴処分)のよしあしを審査する検察審査会の審査員も国民からくじ引きで選ばれる。ともに一応の成果を見せている。安倍首相(当時)の「桜を見る会」前夜祭での不明な支出処理を、検察が不起訴とした処分を不当とした審査会が注目されたのはその一例だ。
山田洋
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