トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 有難味の薄かった婦人参政権
外交評論家 加瀬英明 論集
四月五日の社説は、また、「棄権防止のために」という題である。
「総選挙の期日は、いよいよ目前に迫ったが、伝えられるところによれば一般国民の選挙に対する関心は、極めて低調だといはれてゐる・・・経済の専門家でも学者でもない一般大衆が、細かい経済技術上の問題について、批判を加へ、是非の判断、すなはち国家の行かんとする方向を大摑みにつかむといふことは、経済の専門家でなくても容易に出来ることである。しかし、選挙においては、さういふ程度の判断で十分である」
と説いている。これでは、まるで民主主義の初歩を教えているといってもよいだ
ろう。しかし、これが三十二年前の日本の社会だったのだ。
二日後の社説は、「婦人参政権の目標」というものであるが、
「いよいよ投票日が切迫してきた。依然として懸念されるのは婦人の投票であり、当初予想されてゐた五割とか六割とかいふ棄権率が、果して修正されるかどうかは疑問とされる。然しながら各方面よりする啓蒙的な運動と、候補者側からの呼掛け等によって実際の投票がどんな結果になるか不明である」
と書きだしている。そして
「今度の選挙権の拡大に伴って婦人選挙権が与えられたといふことについては、一般に突然天から授かったやうにいはれてゐる。なんらの特牲なく、戦ひ取ったものでないから、したがって婦人自体この参政権の有難味を感じることは薄いといふ風に解釈されがちである」
と述べている。これは婦人だけではあるまい。当時の―そして今日の日本人のほ
とんどにあてはまるのではあるまいか。その後、私たちは与えられた自由を失う
ような過酷な体験はしていない。そこで自由の「有難味」を味わったり、自由に
ともなう責任を学ぶようにはならなかったのである。いったい私たちは、この三
十二年間で何が学べたというのだろうか?学ぶような衝撃はなかったのだった。
個性の時代 ミーイズムのすすめ 9章「民主主義」に潜むもの
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