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コラム …男の珈琲タイム
2月の12日は確か司馬さんの菜の花忌だったか。司馬さんは春盛りの菜の花を愛した。あの明るさ。桜が短い命を予感した美しさとは対照的だ。司馬さんは貧家から身を起こし、豪商にまでのぼりつめた高田屋嘉兵衛を菜の花の沖と表現した。とにかく、幕末から明治の快男児が好きだった。あのリズムかるな文体が私を含めて、多くの人達に勇気と共感を与えた。そして、来たる6月は明治人とは全く真逆な文人太宰治の忌だ。暗い。嘉兵衛と違って富豪の家から入水自殺。しかも愛人を巻き込んで。自意識の過剰さも天才的だった。人間失格を書いた。我々凡人にはとても理解できない。失格の仕方だった。桜桃忌とは友人の作家がつけた。さくらんぼに気の毒だ。しかし、太宰は人間の明暗を鋭くとらえていたのかもしれない。人はみな明と暗の振り子なのかもしれない。そこに強い弱いが鋭く刺さるだけなのかもしれない。2人は人間と人生を100年以上教え続けてくれている。
鹿島修太
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