トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 一身の独立が国家の独立を生む
外交評論家 加瀬英明 論集
交詢社の長老の会員を前にして、福沢精神について話をするというのは、無謀だったかもしれなかったが、かねてから福沢諭吉の教えが持つ意味が、このごろの日本にとって大きくなっていると感じていたので、やはり演題として福沢翁を選んでよかったと思った。それに交詢社の会員は、福沢精神の理解者であったから、よい聴衆に恵まれていた。
福沢翁の『学問のすすめ』は、今、読んでも昂奮を覚える。今の日本社会にもよくあてはまるのだ。『学問のすすめ』の初篇が刊行されたのは明治五年のことであるが、福沢は三十七歳であった。福沢は日本が十九世紀末期のアジアにあって、どうすれば西洋の列強の脅威から脱し、独立を全うすることができるか、心を砕いた。そして海外諸国を観察してえた見聞を紹介しつつ、日本国民が新しい時代にふさわしい、新しい精神を持つべきことを勧めたのだった。福沢は『学問のすすめ』を「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと云えり」という警句でもって書き始めたように、新しい日本において国民は平等であり、個人がしっかりと自立することが、何よりも必要であると論じた。
福沢はこの本のなかで、維新によって、「平民へ苗字乗馬を許せしが如きは開闢以来の一美事、士農工商四民の位を一様にするの基ここに定りたり」といい、国民は一人一人が「我身分を重きものと思わねばならない」と訴えている。そして「国中の人民に独立の気力なきときは、一国独立の権義を伸ること能はず」といって、「一身独立して一国独立す」と説いたのだった。
個性の時代 ミーイズムのすすめ 10章 福沢諭吉と「自由」
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