社会
特に埼玉県、さいたま市の政治、経済などはじめ社会全般の出来事を迅速かつ分かりやすく提供。
昨年7月から10月まで東京新聞に元・法政大学大学院教授の坂本光司さんの自伝が連載され、多くの読者の共感を呼んだ。「企業の使命は人を幸せにすること」という信念のもとに全国8000社を訪問し、自らの目と足で確かめた「いい会社」が紹介され、会社と社員の熱いドラマがふんだんに盛り込まれていた。新聞社にも「あふれる涙で新聞が読めなくなった」「まだまだ読み続けたかった」などの声が多数寄せられたという。昨年末には『もっと 人を大切にする会社』(東京新聞社 定価1650円)として単行本化された。
大学などで教える経営学というと、業績重視、株主重視などに傾きがちで、これに異を唱える坂本さんは2014年に「人を大切にする経営学会」を創設した。当初の発起人には約70人が名を連ね、学者だけでなく、会社経営者、産業医、弁護士、公認会計士も加えた。そして発起人代表5人の中に、坂本さんが尊敬し、私もかつてお世話になった人の名があって嬉しくなった。
中小企業論の権威で法政大学元総長の清成忠男さんだ。この人が国民金融公庫(現・日本政策金融公庫)に勤務していた1970年代初頭、週刊誌の新米編集部員だった私は取材でお会いした。新たに起業した人たちの情報に通暁していることを知り、電話連絡して押しかけたのだ。私の配属先の週刊誌はサラリーマン読者が中心で、脱サラで新事業を始めた具体例を紹介する記事が毎号のように掲載されていた。ただ、情報源が限られていて、取り上げられた事業も将来性や独自性に物足りなさが感じられた。
清成さんは初対面の私に注目すべき起業例をいくつも紹介してくれ、起業家たちも取材に快く応じてくれたので、記事は満足のいく出来となった。その後、清成さんは学者の道を歩むことになった。「ベンチャービジネス」という語を世に送り出したことでも知られる。私は感謝の気持ちをずっと抱いていたが、これほど情報を持つ人への取材が1回きりだったことで、自分の淡白さを今になって悔いている。
山田洋
バックナンバー
新着ニュース
- エルメスの跡地はグッチ(2024年11月20日)
- 第31回さいたま太鼓エキスパート2024(2024年11月03日)
- 秋刀魚苦いかしょっぱいか(2024年11月08日)
- 突然の閉店に驚きの声 スイートバジル(2024年11月19日)
- すぐに遂落した玉木さんの質(2024年11月14日)
特別企画PR