トップページ ≫ 社会 ≫ プロレス出身知事が仕掛けた反則技
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石川県の馳浩知事(62歳)は、地元テレビ局の石川テレビ放送が製作したドキュメンタリー映画『裸のムラ』の中での自身や県職員の映像の肖像権を巡って同社と対立し、公約としていた月1回の定例記者会見を拒否している。そして定例会見の開催条件として、同社の社長が会見に出席して議論することを要求している。
石川テレビは映像の使用は報道目的であるから問題はないとし、社長は会見に出ない意向を示した。この映画は昨年と一昨年に放送された番組2本をもとに新たな映像を加えて製作したもので、7期にわたった前知事から馳知事に代わった石川県政を追い、多選を生んだ政治構造、その背景にある男性中心の「ムラ社会」を描いている。
この問題についての識者の意見は、馳知事の主張には無理があるとするものばかりで、積極的な擁護論は見当たらない。その中でユニークだったのは、プロレスラー時代からの馳知事を知り、対談したこともある「時事芸人」プチ鹿島さんの見方だ(東京新聞 5月4日)。「他のプロレスラーと色合いが違い、明るく論理的で合理的」と往時の彼を評価しつつも、「1980年代後半から90年代にかけてのプロレス界は、気に入らないメディアを拒否したり、情報をコントロールしたり、記者をなめているところがあった。だから今回の一件は、悪い癖が出たなと感じた」という。
やはりプロレスに詳しいコラムニスト、斎藤文彦さんとの共著『プロレス社会学のススメ』(ホーム社・集英社 2021年)では1987年のこんな実例を紹介している。当時の好感度調査で1位のタレント、山田邦子さんがテレビ番組の中で、プロレスの流血シーンについて馳選手に「あの血は控え室に戻るとすぐに止まるものですか?」と聞いたら、「つまらないこと聞くなよ、止まるわけないだろ!」と声を荒げ、スタジオが凍りついたのだ。
知事の記者会見拒否騒動の折りも折り、石川県能登地方では5月5日に震度6強の地震に見舞われ、以後も震度3以上が頻発している。地震対応には姑息な裏技は通用しない。正攻法で事に当たってほしい。
山田洋
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