社会
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安倍元首相への銃撃事件から1年が過ぎようとしている。容疑者が世界平和統一家庭連合(旧統一協会)の宗教2世だったことから、韓国で誕生したこの教団の霊感商法という集金手法がにわかに注目された。さらに自民党の政治家たちと教団の関係が明らかにされた。一時は教団の解散請求もささやかれたものの、調査に時間がかかり、この問題への国民の関心が薄まっているのは否めない。早くも6月24日に、自民党神奈川県連は次期衆議院選挙に、旧統一協会との接点が相次いで指摘されて経済再生担当相を事実上更迭された山際大四郎氏を公認候補とする意向を示した。
とはいえ、この事件は人々が宗教、特に新宗教について考える機会をもたらしたことは確かだ。科学万能で唯物論的思考が支配的な世の中で、先祖の霊とか言われて、教団の献金システムに組み込まれてしまう。過去の日本の朝鮮半島支配の贖罪として金銭の提供を求められ続けるのだ。
幸福の科学もやたら霊の話を出してくる。創立者の大川隆法総裁は古今東西の偉人たちの霊言を伝え、それを書籍にして会員に販売する。旧統一協会の壷に比べれば安いものだが、次々に刊行されるので全部買っていたら大変だ。この出版ビジネスが教団の財源と言われる。
大川総裁の政治志向も相当なものだった。2009年に幸福実現党を立ち上げ、その年の衆議院選挙には大量立候補したが、総裁本人を含め全員が落選。その後の選挙でも国会での議席は獲得していない。
政党結成時に16条から成る「新・日本国憲法試案」を発表した。この試案については、「国民や国家が『神仏の心』によって基礎づけられると定められている。また、国政の頂点に立つ存在として大統領制が導入され、その権力を制限する機構が事実上存在していない」(大田俊寛・著『現代オカルトの根源』 ちくま新書)との指摘がある。その教祖も3月に急死した。絶対的なカリスマを失った教団の進路はまだ見えてこない。
日本最大の新宗教である創価学会は1930年の創設以来、何度も苦難に直面しながらも、その主張を改変しつつ生き延び、巨大化した。地方から上京してきた労働者たちを中心に信者を増やしていった。政治進出も早く、1964年に公明党を設立し、国会や地方議会での議席を着実に獲得してきた。1999年以降は自民党と連立を組んだ。しかし、次回の衆議院選挙では東京都での協力関係を解消することになった。創価学会が基盤の公明党と自民党が連立すること自体に無理があるとの見方があり、これが本格的な連立解消に進む端緒になる可能性もある。幾多の試練をしたたかにくぐり抜けてきた創価学会と公明党がどう対応するか興味深い。
山田洋
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