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外交評論家 加瀬英明 論集
日本人は非ユダヤ・キリスト教民族のなかで、物質面で静養の白人と並ぶ、唯一の国をつくることができた。日本の発展は、世界を驚かせるほど急速なものであった。しかし非白人国のなかで唯一の国というのは、異常なことである。そこで、その代償を払わねばならなかった。自分の生活文化を混乱させてしまうという、高い罰金を課せられてしまった。日本の伝統文化を疎かにしてきたために、心の奥のほうで、深い傷を負ってしまっているのだ。西洋と並ぶことができた今、自分たちのなかにある日本人と和解をすべき時がそろそろ来ているのだろう。
私たちはもう一度、日本を見直し、伝統のなかでどのようなよいものがあるか、何が大切であるのか、考えなければならないだろう。動から静の生活へ、慌ただしい生活から落ち着いた生活を取り戻すために、日本人らしい生きかたを大切にしなければならないだろう。
もっとも、日本の伝統を求めようとすると、狭い排外主義的な道へ迷い込みやすい。やはり日本人が長い間、この島国のなかで世界から独立して暮らしてきたからであろう。日本的なものを追ううちに、一歩誤ると日本だけの小さな世界のなかに、のめり込んでいってしまうことになる。
これは、日本語が孤立していることからきているのでもあろう。日本語はヨーロッパ諸語を例にとって較べてみれば、諸語に当たるつながりを持った言葉が周囲になく、たった一つのものだ。それだけ純粋なのだ。ヨーロッパ諸語であれば、ラテン、ギリシア語をもとにして発達しているので、英語を話せば、フランス語やドイツ語などの諸語がまるで影人格のように控えている。そして牽制力として働く。ドイツ人が四十五年も前にヒトラーの抬頭を許したのは、当時、ドイツ人のほとんどの者がドイツ語しかできなかったということがあっただろう。しかし、今日では隣国が姉妹語を話しているということから、言葉のなかで一つのものに陶酔できないし、できないだろう。(あるいは以前から知識人ならばそうできなかっただろう)
個性の時代 ミーイズムのすすめ 11章 「日本の伝統」に学ぶ
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