社会
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2023年のノーベル賞発表がすべて終わった。今年は日本人の受賞者の名前はなく、どことなく寂しい思いが残った。
ノーベル賞の話題が出る頃には、旬のリンゴたちもますます赤みを増してくる。
この深まる秋から冬にかけ、心の中をめぐる一曲がある。それは「氷の世界」(作詞作曲 :井上陽水)だ。
何と言っても歌詞が大変印象的。今の時代に突然聴くと、何が何だかわからないことだろう。
「窓の外ではリンゴ売り 声をからしてリンゴ売り」で始まり、「人を傷つけたいな 誰か傷つけたいな」と急展開してゆく。
その後いったいどう続くのか、はらはらしながら聴き続けると、何とノーベル賞が絡んでくる。
人を傷つけたくても、自分が恐いだけで出来ない人間の心に触れ、「そのやさしさを秘かに 胸にいだいてる人は いつかノーベル賞でも もらうつもりでガンバッてるんじゃないのか」。
この「氷の世界」が発表されたのは1973年。高度成長期の終わりだ。浅間山荘事件(1972)や第一次オイルショック(1973)など、記憶にのこるニュースが飛び交っていた時期である。
穏やかな日常を歌った他のアーティストの曲と比較すれば、明らかに穏やかとは言い難い心情を歌った「氷の世界」の発表から、はや50年が経過した。
寒暖差をいかしながら旨味を増してゆく旬のリンゴは、寒暖差に負けそうな人間にとってのエネルギー源である。
貴重な旬のリンゴをほお張りながら思うのは、時代の移り変わりと季節の移り変わり。更には、人心と気象の普遍性やそこにある不条理性だ。
気になる今年のリンゴの味はと言うと、驚くほどに甘かった。
葉桜こい
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