社会
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作家の伊集院静氏が11月24日に胆管がんで亡くなった(享年73)。文壇だけでなく芸能界、スポーツ界など交友範囲は広かった。週刊誌での連載エッセイ『大人の流儀』は時々読んだが、流儀という語に「人はかくあるべし」というような息苦しさを感じていた。私が出版社に在籍していた時の編集者仲間がエッセイに登場しているようなので、この際に単行本化された『流儀』シリーズ(講談社刊)を読んでみたら、食わず嫌いだったことを思い知らされた。
好き嫌いをはっきり表現した歯切れのよさに引き込まれたのだ。嫌いの矛先は小池百合子都知事や菅義偉前首相など政治家が多いのはうなずける。「最後の無頼派作家」と言われ、多彩な人脈を有していたが、そのような派手な面ではなく、普通の人々との交わりから生まれた「いい話」も多い。
人気女優だった前妻(夏目雅子さん)の命を奪ったのは白血病だった。都心の大型書店の文芸書担当で、伊集院氏のサイン会を熱心に企画してくれた女性店員も同じ病に倒れた。職場に戻れなかった彼女のためにお盆には供物を送り、同じ店でサイン会を続けていた。
夏目さんが亡くなった時の内輪の席では彼女の祖父から声を掛けられた。皆に賛成されたわけではない結婚だったが、心底喜んでくれたこの人から「すぐに後添いを見つけなさい」と言われた。「君は若い。人生はこれからだ」の言葉に何も答えられなかったそうだ。
このようなエピソードも書きようによっては自慢話と受け取られかねないが、自分を抑えた表現により、読者の心を揺さぶる。人との縁ばかりではない。出会ったペットショップで断然の不人気、伊集院氏も「バカ犬」と呼んでいた偏屈な愛犬ノボとの物語は、人間と犬の関係を超越している。エッセイに登場する回数も人間以上だし、両者の会話も通じているようで「流儀」を忘れて楽しめる。
山田洋
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