トップページ ≫ 社会 ≫ 選択肢あってこそ 水素エンジンの未来
社会
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つい先日までガソリンエンジンに代わる動力源は電気一択と言われていた中、アメリカでのハイブリット車の販売が盛り返しているという。2023年の年間販売台数は約340万台、前年の260万台から130%と大きく伸長した。価格、電気充電のインフラ不足、総合的な使い勝手の良さなどから再び支持されているようだ。
この10年、ハイブリット車を世界に広めたトヨタは、自社が優位性を保つ技術に固執し、BEV(電気自動車)の普及を妨げる後ろ向き企業と世界中、特に環境保護団体等から痛烈にその企業姿勢を執拗に批判され続けてきた。ハイブリット車は世界が理想とする最適解ではないにせよ、初代プリウス発売以来培われてきたその安定した工業製品としての習熟性が、現時点での漸近的選択肢として、改めて消費者がその魅力を再発見したといった所か。
とはいえ喫緊の課題としてよりクリーンでかつ持続可能なエネルギー源が必要とされる中、水素が注目を浴びている。特に大量の温室効果ガスを排出する輸送分野において、水素エンジンの開発が加速している。水素エンジンは、ガソリンの代わりに水素と酸素の燃焼反応を利用してエネルギーを生成して動力源とする。つまり従来型エンジンの内燃機関を活用・応用できる技術だ。そのメリットとしては、「化石燃料と比較して走行中の環境負担が少ない」「エネルギー資源の枯渇の心配がない」という点があげられる。また別の特長として、エンジンに高負荷がかかるときに高効率となる傾向があることから、特に重い物を多く運ぶ大型トラック用としての水素エンジンの開発が先行して進んでいる。
一般的評価では水素エンジンの将来性普及については「ディーゼル車や電気自動車ほど広範囲に普及しない」という懐疑的な見方がある一方、先に記した大型商用車や海上輸送分野などでの活用については広がりが期待されている。そのポテンシャルにひとつの選択肢としての期待が高まる一方、実用化に向けては課題も存在している。まず第一にあげられるのはインフラ整備だ。ガソリンスタンドやEV充電スタンドと比較して、水素ステーションの設置数はまだ非常に少なく、まず環境の整備が必要条件だ。また化石燃料と比べて、エネルギー密度が低く、燃費が良くないといった経済的側面からの課題も指摘されている。
トヨタだけではなく、昨年中国の大手自動車メーカー・広州汽車集団(広汽集団)は水素エンジンを搭載した試作車(乗用車)を発表。この試作車は、1回の水素補充で600キロメートル近く走行できるとの事だ。将来事業化の際は、試作した乗用車ではなく、大型トラック向けの水素エンジンから実用化していく方針との説明がされた。
脱炭素社会の実現、長年に渡り化石燃料に依存してきた社会が水素を始め、他のエネルギー有効活用社会へシフトするには、社会構造も含めて様々な困難が伴う。しかし、水素はその実現に向けた重要な燃料であり、未来に向けてその活用の為の技術革新、またそれを下支えする社会全体の理解、支援もより熱意を持って進めていく必要がある。
小松隆
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