ある夜夢の中でお釈迦の神様が現われた

神様「お前の願い事は何んだ」

「才能、名誉、冨、権力、快楽、健康…」

無いものを指折り数えました

神様「平凡だなあ、まだあるだろう」

肝心なものを忘れていました

この世の王達が最後に求めたものです

「…そしてそれが何時までも続く不老不死です」

海行かば水漬く屍　山行かば草生す屍（大伴家持）

誰にも葬られず土となり草の露になる者達もいます

この世で無事生を終えた者は墓石に氏名と死亡年が刻まれます

偉人、天才たちは更に額縁に入り死後も末永く残ります

深刻な顔をしているベートーベン、ゴッホの生涯は寂しいです

決闘で二十歳で死んだ数学の天才ガロア

悪名だけ残している王達

一つだけと言われて選びました

それは「幸せ」であることです

神様「人の幸せにはいろいろある。どんな幸せか」

「何処も痛くないこと

誰かの迷惑にならないこと

小さなことでもいいから人の幸せになることです」

神様が笑いながら言いました

「分かった。お前も野の花にしてあげよう」