赤ん坊は泣きながら生まれる

生まれる前雲の上で聞いたこの世は争いばかり

新聞を見てもTVを見てもこの世は地獄

昔は良かったか？

応仁の乱の京の町は地獄だった

一四六七（ヒトノヨムナシイ）から十一年亘る戦禍、旱魃、疫病

浄土真宗の蓮如はひたすら浄土を説いた

人の行き先は極楽か地獄の二つだった

近年科学の成果により死後の可能性は一つだけになった

天国も地獄も何もない世界である

何れも自信のない私には死後の可能性は二つに増えた

最近一つ減ったのは死後の地獄界である

地獄はみな人が造ったものでこの世以上の地獄はない

無くなるだけで楽しいもの、嬉しいものもある

多額の借金がある者は無くなるだけで嬉しい

持病で痛みがあるものはそれが消えるだけで幸せ

良いドラマも音楽もフィナーレが素晴らしい

「人は死なない」という本を書いた人がいる

時折亡くなる前に微笑む人がいるという

東大救急医療チームの医学博士の矢作直樹という人の体験記だ

未来は過去になるため　昔から在るのは今だけ

五歳の子も　八十過ぎの私も

おおっ　紺碧の空に始祖鳥が飛んでいる

山上　村人