社会
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一部で極右とも称されるフランス国民連合の下院選挙での大躍進が確実視されている。EU(欧州連合)の一翼を担う大国、フランスの動静は今後の世界政治に少なからぬ影響を及ぼすと考えられる。
紆余曲折を経て成立したEUは、汎ヨーロッパ主義(Pan‐Europeanism)という思想・運動がそのバックボーンとなっている。汎ヨーロッパ主義とは、欧州全体を一体として捉え、統合を目指す思想や運動の事である。長年に渡り、自国の利益にとらわれて繰り返されてきた戦争を阻止するには、各国間で常に胸襟を開いた話し合いの場を持ち、関税や通貨、出入国、労働許可、福祉、防衛などあまねく分野で、共通のルール・土俵を設けるという考え方だ。EU及びEUの市民権は1993年のマーストリヒト条約発効により、確立。その後加盟国は増え現在は27ヶ国となっている。
成立の理念を具現化する形で、性別、民族、宗教、性的指向を理由とするあらゆる形態の差別の排除、子どもと女性の権利の促進、死刑制度の廃止、表現や宗教の自由等の市民的自由の擁護、人身売買に対する闘い、市民社会の役割の向上などを共通の規範として掲げてきたEU各国の足並みに、近年乱れが生じ始めている。2022年9月には主要国イタリアでメロー二氏率いる『イタリアの同胞/FDI』を中心とした、右派連合政権が誕生した。
それ以前のメロー二氏の発言からの引用となるが「自然な家族に賛成、LGBTロビーに反対、性的アイデンティティーに賛成、ジェンダー思想に反対、イスラム主義暴力に反対、強固な国境に賛成、大量移民に反対、大きい国際金融機関に反対、ブリュッセルの官僚に反対」と述べており、その政治的思想と現在のEUの掲げている各理念との相違は極めて大きいものがある。ただ現時点での政策運営は、EUとの協調路線を継続しており、落ち着いた動きを見せている。
人類に取って普遍の価値観を、世界に先駆けて体現したその熱気・高揚感からはや30有余年参加各国の足並みはそろっているとは言い難い。域内での経済格差などを背景とした各国でのナショナリズムの台頭の動きは、今後も勢いを増していくのは間違いないだろう。
明日起こり得る現実の出来事として、図らずも戦争が意識されるようになった今気高い理念と市井の生活を如何に接合させていくのか。破壊ではなく、創造にこそ未来は託されると信じる。
小松 隆
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