トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ そろばん説・経営道徳合一説——渋沢栄一
外交評論家 加瀬英明 論集
江戸時代の日本では、商道徳が確立されていた。近江商人の「売り手よし、買い手よし、社会よし」という精神が、全国にひろまっていた。
渋沢栄一は、明治から大正にかけた実業家で、財界の指導者だった。
渋沢はぺルリ艦隊が嘉永六(一八五三)年に浦賀に来館した十三年前の天保十一(一八四〇)年に、今日の埼玉県の農家の子として生まれた。
父親は特産物の仲買や、荒物屋や、質屋も経営していた。父親は学問を好んだ。渋沢は日本の近代資本主義を、つくった巨人だった。生涯を通じて、五百以上の会社を創立した。
福沢諭吉と並んで、日本の産業化の発展にあたって、経済の近代化をもたらした最大の功労者といわれる。
七十六歳で引退すると、余生を社会公共事業に告げた。
渋沢は「仁義道徳と金もうけの商業」が、一体であるという「論語とそろばん説」と、「経済道徳合一説」を説いた。
「およそ事業は、社会の多数を益するものでなくてはならない。その経営者一人がいかに大富豪になっても、そのために社会の多数が、貧困に陥るようなことでは、正常な事業とは言えない。その人も、また、ついにその幸福を永続することができない」
「その富の作り上げる根源は何かというと、仁義道徳、正しい道理の富でなければその富は永続することはできない。論語と算盤という懸け離れたものを一致させることが、今日のきわめて大切な勤めである」
渋沢も江戸時代の精神が、つくった人だった。
幕末の志士や、多くの日本人が国や、社会を発展させるために、能力をひたむきに磨いた。自分の力をつけることによって、役に立とうとしたから、自分を尊重した。このような情熱が、日本を盛り立てた。
徳の国富論 資源小国 日本の力 第四章 売り手よし買い手よし社会よし
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