社会
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来年度の税制改正を巡る政府税制調査会の議論が大詰めを迎えている。消費税率アップは別としても今の成行はとても合格点は付けられない。
実施するのが望ましい税制改革
法人税率引き下げ
経済産業省は引き下げに熱心だが財務省が強く反対している。税調委員の一部が「引き下げるなら投資や雇用を増やすよう財界の確約を取れ」なんて言っている。それに対して米倉経団連会長が「民主党は資本主義の何たるかを分かっていないのでないか」と批判したのは全く正しい。
需要のないところに投資も雇用も増やせるわけがない。そうではなく減税の目的は法人税という経済の無形インフラを改善することで企業の海外移転を阻止し或いは海外企業を呼びこもうとするものだ。
確かに日本共産党が言う通り日本には租税特別措置法があるので実効税率は実はそれほど高くない。だが租税特別措置法は業種によって恩恵には随分バラつきがある。法人税減税は一律に減税する話だから租税特別措置法とバーターの関係にない。ただ財源捻出のため租税特別措置法の一部を廃止する手はある。租税特別措置法の廃止は税制の簡素化という点でも意味がある(私は日本の税制が複雑であるのは税務署OBが多い税理士の仕事を増やすためでないかと疑っている)。
確かに1、2年の短期で見れば財務省が懸念するように法人税税収は多少下がるだろう。だが長期的にはプラスに働くはずだ。
配偶者控除の廃止
就業者数が減少傾向にある中で専業主婦は最も有望な潜在的就労層だ。配偶者控除は専業主婦の勧めであり、高度成長期には意味があったが今となっては女性が外で働くのを抑えるマイナス・インセンティブとなっている。ところが今の政府税調の議論を見ると来年度もこの制度は存続する形勢にある。
その他実施が決まった税制改革
相続税の基礎控除引き下げと最高税率アップによる実質増税。給与所得者の中、高額所得者の基礎控除を一定にすることで実質増税。企業役員等の退職金課税の強化等。
こうして見ると貧者のジェラシーに阿るような改正(?)ばかり実現し、消費税率アップはもとより所得税の課税最低限の引き下げ等課税ベースを広げる方向に行っていない。
こんな増税案では危機的財政にとって焼け石に水だ。
本当は税制こそ国会の公開の場で議論すべきであり、与党の一部の議員だけに任せるべきではない。
今年を漢字1字で表すとなんてまだやっている。1字ではむずかしいが民主党政権にまつわる4字熟語ならいくらもある。遅疑逡巡、右顧左眄、疑心暗鬼、支離滅裂、五里霧中、優柔不断、因循姑息、旧例墨守、時代錯誤、八方美人、朝令暮改、暗中模索、小田原評定(政府税調の議論、小沢問題の処理等。これだけは五字)。そして菅首相に欠けているもの。剛毅果断、勇猛果敢、倜儻不羈(てきとうふき)。貧すれば貪する。
先週菅首相は今年を一字で表すと「実行の『行』」なんて言っていたが彼がやっていることは難問先送りばっかりだ。たった5%の法人税減税ですったもんだするようでは首相のリーダーシップはどこにある。ひまがたっぷりあったはずの野党時代に何も考えていなかったからこの体たらくだ。
ここまで書いてきたら法人税率5%引き下げを菅首相が決断したとの速報が入った。それはいいとしても菅首相が「企業は雇用の増加や賃金引上げに努めてほしい」と言ったのは蛇足だ。理由は前段に書いた通り。
(ジャーナリスト 青木 亮)
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