トップページ ≫ 社会 ≫ ある「1969」エピソード由紀さおり、いずみたく氏の思い出から
社会
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アメリカのジャズオーケストラと共演した由紀さおりのアルバム『1969』が世界22カ国で発売され、大ヒット中だ。タイトルは彼女のデビュー曲『夜明けのスキャット』ができた1969年にちなんだもので、同曲をはじめ、その年の内外ヒット曲が収録されている。長い年月を経て甦ったこの曲に、私も薄れかけた記憶の奥から1つのシーンが浮かび上がった。
当時、仕事探しをしていた私は、技術習得のため、日本放送作家協会主催のコピーライター養成の夜間講座に通っていた。CMソングがテーマの講座があり、講師は人気作曲家のいずみたく氏。この人はCMソング界でも巨匠で、ハトヤホテルやキャンロップなどおなじみの曲が多い。
銀座7丁目の旧・電通本社ビルの教室に、サングラスのたく先生は大型のテープレコーダーを自ら運び込んできた。よく通る落ち着いた声でしゃべり始めたが、話題はもっぱら近々発売される新曲について。日本で初の歌詞が全然ないスキャットだけの曲で、歌うのは童謡歌手だった安田章子、すっかりイメチェンして名前も由紀さおりに変えたとのこと。
スーパーヒット曲を立て続けに出していたたく先生も、この新曲には相当な思い入れがあったようだ。いつもの講座より大勢集まった受講生たちもその熱気に圧倒されっぱなしだった。
慣れた手付きで機械を操作して聞かせてくれた『夜明けのスキャット』は、作曲者本人の前口上も手伝って聞く者に強い印象を与えた。ヒット曲誕生前の一場面に立ち会えたという喜びもあったはずだ。
私も快いメロディーと由紀さおりの澄んだ声に、ヒットを予感した。職探し中の身としては「夜明け」というイメージはうれしかった。ただ「歌詞が全然ない」という触れ込みだけど、ラストに少し入っていたなと、変なところで気になっていた。
こうして、いずみたくワールドにすっかりひたったまま、講義は終了し、また重いテレコを持って講師は帰って行った。そして、後に残った私たちは、テーマのCMソングについては何の話もなかったことに気付いたのだ。
あれから43年、『夜明けのスキャット』を聞くと、今は亡きいずみたく氏の得意満面の顔と声がオーバーラップし、思い出し笑いが止まらない。
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