トップページ ≫ 社会 ≫ 衆議院選11区秩父路は早くも終盤戦
社会
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年末から年始にかけての衆議院解散総選挙が確実な情勢になってきた。埼玉11区の情勢を見渡すと、すでに激しい戦いが展開されている。
7月20日は秩父神社の夏の大祭、川瀬祭り。祭典が行われる神社本殿には、北堀篤県議とともに小泉龍司元代議士も出席した。「いよいよ解散総選挙が近づいて来ましたね。5月の連休に秩父札所34カ所を回ったところ、巡礼道に小泉さんのポスターがあふれんばかりに貼ってありました。捲土重来ですか」と話しかけると、「ええ、一所懸命やっています」と語り、次の祭り会場に回って行った。「小泉代議士はお祭りには来てくれないね」と、秩父神社の薗田稔宮司(京都大学名誉教授)が言っていたことがあるが、現役時代はあまり顔を出さなかった秩父の祭りに、小泉氏は近年になってよく顔を出している。
秩父夜祭りの祭典である12月3日には、秩父地域の市町村長を初め、財界人や文化人など約300人が参列する。祭典のあと直会があり、このパーティに参加すれば秩父地域のオピニオンリーダーを一網打尽にできる。夏祭りは冬の夜祭りより規模が小さいが、秩父のかなりのVIPが集まる。歴代の秩父市長は秩父神社の祭典にはかかさず出席するほど。秩父地方は゛祭りの博物館゛といわれ、1年中祭りがどこかで行われている。江戸時代いやそれ以前から続く祭りが多く、祭り→まつりごと→政治、と祭りと政治が一体化しており、秩父地方で育った人でなければこの慣習はなかなかわからない。小泉氏は秩父で育っていないが、落選中に祭りの効果に気づき、精力的に回っているものと見られる。
小泉氏は3年前、郵政民営化に反対票を投じ、解散後自民党から公認されず無所属で立候補した。小泉政権が公認したのは県議だった新井悦二氏。深谷市長新井家光氏の弟で、現職の小泉氏を破り当選した。タレント気取りの小泉チルドレンの中にあって政治歴もあり、軽薄な他のチルドレンとは異なり、政治的には大人である。
7月22日夜、東京・日比谷のプレスセンターで開かれたパーティで新井代議士に会った。「明日は皆野に行きますが、お会いしたらよいという人がいたら教えて下さい」といわれ、2人の名前を上げた。秩父音頭家元の金子千儔氏と大蔵省OBの設楽岩久氏。金子千儔氏は秩父音頭を世に出した金子伊昔紅氏の2男で、金子医院と家元を受け継いだ。長男の兜太氏は東大を出て日本銀行に入ったが復員後、労働組合の委員長に担ぎ出され、日銀の出世はストップ。以後、俳句の道に入り、俳人として文化勲章の候補に上るほどだ。3男の洸三氏は、東京・銀座でマスコミ界では有名なPR会社を経営している。このように金子家は秩父地方でも有数の家で、2男の千儔氏が郷土を守ってきた。設楽氏は大蔵省の主計局が長く、埼玉県の市町村長の多くが、補助金や交付金で世話になってきた。皆野町親鼻の出身で、家を建て直しときどき地元に帰っている。「金子氏にはあいさつできましたが、設楽氏には不在で会えませんでした」と翌日の夜、電話があった。新井氏も積極的に選挙区を回っているのである。
3年前の埼玉11区の得票は、新井悦二氏9万7928票、小泉龍司氏9万3008票で、わずか4920票差だった。2003年の選挙は小泉氏が自民党公認で立候補、民主党と共産党を破り12万3057票を獲得、2000年の選挙では無所属で8万908票をとり、自民公認・現職の加藤卓二氏を破った。今度の選挙は、新井・小泉の事実上の一騎打ちになろう。県南や東部で強い民主党の力は県北西部では弱く、まだ11区の民主党候補は発表されていない。注目されるのは平沼新党の行方。平沼赳夫氏は小泉氏の応援で、何度か秩父入りしている。「20億円を用意し選挙前に平沼新党を立ち上げるとのうわさが東京にはあるが」と、小泉氏に水を向けたが笑って答えなかった。小泉氏は現役時代、環境税を提唱しておりハト派のイメージが強い。タカ派の平沼氏と政策的に会うのか定かではないが、自民党公認は無理なので、再び無所属で出るのか、平沼新党で出るのか注目される。
秩父路は早くも秋の気配。が、選挙戦はすでに晩秋。自民対民主の戦いとは違う構図の埼玉11区は、全国的にも注目される選挙区の1つになってきた。
志村嘉一郎(ジャーナリスト・帝京大学教授)
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