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人気ボクシング漫画『はじめの一歩』は週刊少年マガジンでの連載が1000回を超え、連載をまとめた単行本は5月発売の最新刊で103巻となった。50年以上の歴史を持つ同誌でも連載1000回は前例がなく、単行本100巻超えは日本の漫画界でも稀で、格闘技漫画では初めてだ。
作者の森川ジョージ氏がこの作品を構想中の1988~1989年ごろ、私は週刊少年マガジン編集部に在籍していた。森川氏の担当編集者N君は私のボクシング好きを知っていたらしく、「ボクシングジムを取材したいんですけど、どこか紹介してくれませんか」と頼みにきた。そこで、当時、最も設備が整っていると言われた角海老宝石ジムに2人を案内した。
森川氏とは初対面だったが、格闘技とは縁遠い風貌で、あのような作品が生み出されることは想像できなかった。ただ、黙々とジムの中を見て回っていた姿が記憶に残っている。
しばらくして『はじめの一歩』は連載開始、たちまち高い人気を獲得し、講談社漫画賞を受賞、単行本はベストセラーとなった。さらに驚いたのは、森川氏自身がボクシングジムを開設したことだ。地下鉄千代田線綾瀬駅前のビルに入ったジムは評判を呼んだ。伝説的な元ボクサーをトレーナーにしたこともあるが、それまでのボクシングジムのイメージを一変させるほどのおしゃれなジムが登場したからだ。
ボクシング関係者にも影響を与えた。世界チャンピオンを何人も輩出した某名門ジムは、往年の名作漫画『あしたのジョー』の丹下ジムさながらの下町の古びた建物だったが、ある時、元ボウリング場のワンフロアを借り切って最新式のジムに変身した。会長に聞くと、「プロ選手育成中心でやってきましたが、綾瀬のジムを見てから考えを変えました。一般の人々が集まるような環境にしないとね」と言っていた。
森川氏の「JB SPORTS」ジムはその後、足立区梅島に移転した。お父さんが経営していた工場の跡地にジム専用ビルを建設したという。京浜東北線、武蔵野線、東武伊勢崎線と乗り継ぎ、西新井駅で降りてジムを訪ねると、3階建ての威容が目を引く。ジム内のリングは小さめに作られているのが 普通だが、ここはスペースに余裕があるから、試合場と同じ大きさになっている。
突然の訪問だったので、森川氏や奥さん(かつて私の仕事仲間だった)には会えなかったが、大ヒット漫画誕生のまさに「はじめの一歩」に立ち会った感慨を新たにしつつ、ジムをあとにした。
(山田 洋)
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