社会
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さいたま市中央区の本町通りは古い蔵造りの家が残っていて、レトロ感覚に満ちた散歩コースだ。イオンモールの東の氷川神社辺りからさいたま芸術劇場にいたる通りで、その昔は鎌倉街道だったという。旧・与野市時代からここを通ると、ホッとしたような心地よさを感じたものだ。
鎌倉時代から農産物の交易の場として市が立ち、江戸時代には市場と宿場の町としてにぎわった。今も残る蔵の家は江戸時代に建てられたものが少なくない。防災そして市のために、通りから引っ込んで家が建てられたので開放感がある。敷地は間口より奥行きのほうが何倍もある。蔵造りの町並みは川越よりも古く、派手派手しさはないものの、川越の蔵造りの手本になったといわれる。
この文化遺産的な町並みも年々変貌している。櫛の歯が欠けるように蔵の家が少なくなっているのだ。つい最近も、代表的ともいえる蔵の家があらかた解体されてしまった。文化財の指定がない以上、古い家を壊すことは規制できない。しかし、往時の景観は様変わりし、町の特色、魅力が薄れてきている。反面、新しい町興しのほうも始動していない。
町の旦那衆もその辺のジレンマを痛感しているのは確かだ。とはいえ、奥行きのある広い土地の持ち主なので、賃貸住宅を建てたり、土地を切り売りすれば、生活には困らない。だから危機感が乏しく、「何とかしよう」という動きをにぶらせているのではないか。「もう手遅れだ」との声もあり、蔵の町を再興して、観光面、商業面で大成功した川越との落差は大きい。
早目に手を打たなかった過去の為政者にも恨み言の1つも言いたくなる。そこで思い出したのは昨年、取材で会った川越の川合善明市長の言葉だ。蔵の町の成功について「行政も協力しましたが、地元商店街の人々がたいへんな努力をしてくれたのです」。櫛の歯が抜けるのを放置したのと、入れ歯みたいに蔵を継ぎ足してでも街並みを整えた差は大きい。
(上田健二)
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