トップページ ≫ 社会 ≫ 日本人の精神が反映された聖火台を新しい競技場に
社会
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2020年の東京オリンピックのメーン会場である新国立競技場は、前回のメーン会場であった現在の国立競技場を建て替えることが予定されている。去る10月11日、「新国立競技場計画を神宮外苑の歴史的文脈の中で考えるシンポジウム」が都内にて開催された。その中で有名建築家の槙文彦さんより「緑が多く歴史的文脈がある地区で、新競技場の巨大さに驚いた。今後を懸念している」という意見が述べられ、また別の参加者からは1300億円に上る総工費について維持費なども含め規模を考える必要性が指摘され、計画の見直しを求めた。現在の国立競技場は来年7月から解体がはじまり、2019年には新しい競技場が完成する予定という。
現在の国立競技場のバックスタンド最上段に、高さ2.1m、直径2.1m、重さ2.6tの1964年の東京オリンピックで使用された聖火台がある。これは川口市の鋳物師・鈴木萬之助さんと文吾さん親子による作である。納期3カ月という非常に厳しい条件の下であったが、「鋳物の街、川口に恥じない物を作る」という意気込みで取り組んだ萬之助さんを悲劇が襲う。製作工程2ヶ月にはいったところで鋳型の爆発があり振り出しに戻ったのだ。そのショックにより萬之助さんは帰らぬ人になった。納期まで残り1ヶ月というわずかな期間にもかかわらず息子の文吾さんは「作らなければ川口の恥、日本の恥」という思いで連日徹夜の作業の末、納期直前に聖火台を完成させた。
明治神宮外苑は明治天皇を顕彰する目的で青山練兵場跡地にできた洋風庭園であり、戦前の日本を代表する都市計画の結実でもあった。競技場も当時は芝生の中にあるきれいなものであったらしい。国の施設として管理されていた明治神宮外苑だが、戦後銀杏並木などの道路用地は東京都、運動場は文部省、その他は明治神宮の管理に分かれてしまった。東京オリンピックのときには他に用地がないため、芝生をつぶして国立競技場を建てた。また明治神宮も戦後の政教分離により、自力で経営せざるを得なくなり収益施設を増やした結果、残念ながら当時の緑の雰囲気はかなり失われてしまった。
今回のオリンピック招致のプレゼンにおいては前回の「レガシー(遺産)」を活用するということがうたわれており、また今回整備するオリンピック施設が将来にわたって日本のレガシー(遺産)にならなければならない。新国立競技場の建て替えにあたっては神宮外苑の原点である緑豊かな景観を取り戻してほしい。そして日本人の精神が反映された川口のレガシー(遺産)である聖火台を新国立競技場にぜひ残してもらいたい。
(林 智守)
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