トップページ ≫ 社会 ≫ 悲劇はなぜ繰り返されるのか~福岡の医院火災から考えさせられること
社会
特に埼玉県、さいたま市の政治、経済などはじめ社会全般の出来事を迅速かつ分かりやすく提供。
9月11日午前2時20分ごろ 福岡市博多区の医院「安部整形外科」で発生した火災は1階部分が全焼、2~4階部分も焼損、院内にいた入院患者ら18名のうち10人が死亡、5名が負傷した。
なぜ、これほどまでに被害が大きくなったのか?
防火管理者の不在、初期消火の遅れなどが指摘されているが直接の原因は、防火扉が作動しなかったために火元の1階から煙が階段を通って上の階に広がり被害が拡大したことだ。防火扉は定期的に点検を行っていないと正常に作動しないがこの医院の防火扉は過去30年点検が行われていなかった。
消防法では、防火設備について年2回の点検と年1回の報告を義務付けているが防火扉は、消防法の防火設備に該当しない。
建築基準法の防火設備には該当するが点検を義務付ける対象は自治体の裁量に任されている。
福岡市では、これまでベッドの数が20以上の病院を対象とし同医院のような小規模の診療所は対象外であった。
県内で30年以上消防設備点検業を営んできた大畑氏は、この報道を受けて悲しみと怒りの入り混じった表情で溜息を洩らした。
「防火扉が原因の事故、防火扉が原因となって大きな被害が出てしまった事故はこれが初めてではないんですよ。県内でも平成10年6月に浦和市立別所小学校で防火シャッターが誤作動して児童が首を挟まれ亡くなる事故がありました。これも点検を怠ったことが原因です」
さらに「仕事を通して消防、行政には意見具申してきたつもりですがこのような事故が発生すると力不足を感じます」と肩を落とした。
この火災を受けての行政の対応は迅速であった。
厚生労働省は11日夜間の体制調査のために職員を5名派遣する異例の措置を取った。
また、福岡市は16日防火扉などの防火設備について定期的な点検報告の義務がなかった有床診療所についても点検報告を義務化する方向で検討を始めた。
大畑氏は、このことについても若干の危惧を感じている。
「点検や報告の回数を単に増やし罰則を厳しくするだけでは早晩形骸化してしまいます。防災のために何が有効かという中身の検討が必要です。例えば、スプリンクラーという消防設備は失火した場合の90%以上消火しています。民間の保険会社も火災保険の保険料について10%以上も割引します。有効なことが明らかなのですから、病院のような人の命を預かる場所については小なりと言えども設置するべきだと思います。その一方で消火器については、設置3年以降容器を空けて中身の確認をしなければならないが消火器の中身は10年程度では劣化しない。有効な設備を義務化しないで、無駄なことをさせている」
合理的でない点検制度が行われる理由を行政にだけ求めることはできない。
これまで多くの企業、学校、病院が防災について官に依存し、有効な防災設備を積極的に導入する姿勢に欠けていた。
病院、施設、企業、学校。人の命を預かる自覚があるのであれば、法改正による義務化を待つのではなく、自ら取り組む必要がある。
また、消防設備点検業者、施設オーナー、ビルメンテナンス会社にはそれをリードする責任がある。
悲劇を繰り返してはならない!
(三津橋 真也)
バックナンバー
新着ニュース
- 島耕作、50年目の慶事が台無しに(2024年11月24日)
- 第31回さいたま太鼓エキスパート2024(2024年11月03日)
- 突然の閉店に驚きの声 スイートバジル(2024年11月19日)
- すぐに遂落した玉木さんの質(2024年11月14日)
特別企画PR