トップページ ≫ 社会 ≫ 「国際成人力調査」から考える今後の日本の教育のすすむべき道
社会
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経済協力開発機構(OECD)では社会生活の中で求められる能力を測る「国際成人力調査」を世界24カ国・地域の16~65歳を対象に初めて本調査を実施し、10月8日にその結果が公表された。今回の調査分野は「読解力」「数的思考力」「IT(情報技術)を活用した問題解決能力」の3分野で、性別・年齢別に加え職業別、学歴別などでも調査が実施された。この調査結果は、各国の成人のスキルの状況を把握することにより、今後の学校教育や職業訓練などの人材育成政策の参考になることが期待されている。
日本は「読解力」「数的思考力」ともに1位で、「ITを活用した問題解決能力」については平均的な10位ということでたいへんな好成績であった。また特徴的なところでは日本は上位と下位の差や、職業や学歴による差が小さく、幅広い層で高い能力を示した。特に中高年が好成績だった。文部科学省では「ITの習熟度では課題が残ったが、全体的なレベルが高かったのは基礎基本を重視する義務教育の成果だ。このレベルを維持し、向上していきたい」とコメントしている。本調査結果が出た後の各新聞の論調も文部科学省のコメントに沿った報道であり、一部新聞やブログではIT教育が十分でない弱点に対しての指摘があった。
しかし、ここではもっと将来を見据えて問題提起をしたい。
検証すべきポイントは
1、教育レベルの高さが付加価値につながるか
2、ITリテラシーの低さが社会コストに反映されていないか
の2点である。
1について言うと、日本のブルーカラーの読解力は多くの国のホワイトカラーと同程度以上だったそうだ。そうした労働者の能力の高さが、「日本製」の安全性や「おもてなし」につながる日本の高品質のサービスにつがっているのだろう。しかし、今後わが国が先進国として高品質大量生産から、デザイン性やブランドに基づく高付加価値型サービスへ産業が向かわざるをえない潮流の中で、今後の教育のあり方は画一的な教育から個性を活かす教育へシフトしなくてはならないのではないか。一例でいえば、一時は世界を席巻した日本の時計産業はいまやローエンド(低価格帯)は新興国に、ハイエンド(高価格帯)はスイスのデザイン時計のシェアを奪われてしまった。ハイエンドで勝負できる人材はこれまでの教育ではうまれていないのである。
2つめのITリテラシーについていうと、今回の調査はパソコンを使って行われたが、日本の調査対象者の4割近くがパソコンを使えないなどの理由で筆記で回答したそうだ。たとえば行政一つとっても電子化がすすむことにより窓口業務の負担などが減ってコスト削減にむすびつく。また、IT利用が促進されコミュニケーションが容易になれば地域のコミュニティー活動もより活発化するであろう。逆説的であるが、日本の中高年の成人力の高さをもってすればITリテラシーの壁は乗り越えられる。中高年のITに親しむ環境作りは緊急の課題ではないか。また同時に学校教育の中でもITに親しむ環境づくりは必要である。デンマークでは小学校1年の時に、タイピングを覚えられるように「デジタルターザンプログラム」といってデンマーク語の単語カードをひき、床の上にあるキーボードのレイアウトマットの上をジャンプすることで自国語とブラインドタッチを同時に覚えるプログラムを実施している。
今回の調査結果をこれまでの教育の成果に満足するにとどまらず、今後の日本の針路を考えるきっかけにしたい。
(林 智守)
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