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日本が海外から本格的に学んだのはいつであろう。歴史をさかのぼって考えると、オランダの医学書「ターヘル・アナトミア」を「解体新書」に翻訳した時ではなかろうか。杉田玄白の記した「蘭学事始」には辞書など無い中、大変な苦心をしながら翻訳をしたエピソードが描かれている。そこまでの苦労を厭わなかったのは、人を救うために新しい技術を取り入れたいという想いからではなかっただろうか。結果的に「解体新書」は日本の医学の発展に寄与し、蘭学という形で西洋の文明を理解する礎になった。
幕末にはその蘭学から軍学者の大村益次郎、大鳥圭介、医学者ではTVドラマ「JIN−仁−」にもでていた種痘館開設の伊東玄朴、教育者では慶應義塾の創設者福澤諭吉といった近代日本の黎明期に欠かせない人物が輩出している。
明治日本の軍隊において陸軍はドイツ参謀本部メッケルから、海軍はイギリス海軍から戦術や技術を学び、自分たちのものにしたからこそ日露戦争で勝利をつかんだ。
鹿鳴館のような上辺だけ真似をすることは確かに軽蔑されるが、素直に西洋文明を学びそれを自分のものにする事により近代日本は成長してきた。しかし、昭和に入ってからの成功体験による驕りや独善が特に軍部を中心に生じてきたため、日本を焦土としてしまったわけである。
戦後は自動車、電気製品をはじめとした各分野で、日本企業は先行している海外企業を研究し追いつき追い越せで「メイドインジャパン」を世界に誇るブランドにしてきた。しかし、「ジャパンアズナンバーワン」と言われたあたりから、日本は追うべき目標を見失いバブルを迎える。バブル崩壊を経た後、成長を経験していない世代は内向き思考と言われ殻に閉じこもっている。
いま「海外から学ぶ」というと、日本の独自性を尊重し外国の物真似に対する拒否か、海外(特に米国)は進んでいて日本は遅れている決めつける両極端な態度に分かれる。米国のシリコンバレーで生まれる革新的サービス、韓国における減価償却期間の緩和、シンガポールにおける事業戦略型都市国家など世界を見渡すと日本の成長のヒントになるものはたくさんある。成功していても日本とは違うという無関心ではいけないが、成功しているからといって無批判に取り入れるのもまた間違っている。要はなぜそれが成功したか本質的に理解し、日本でのあるべき姿をえがき、そこにいたる道筋を見つける事が重要ではないだろうか。
理科の実験の本質は、いろいろ条件を変えることによって得られる結果から科学的法則をみつけだすことである。われわれが実際生きている社会ではそのような実験はできない。しかし、海外での成功事例を、その背景にある政治、経済の制度や社会的背景を含めて分析、勉強する事により、われわれの成長にとってなにをすべきかが見つかると思う。そのように科学的にアプローチしながら学ぶ姿勢を常に持っていたい。
(小林 司)
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