トップページ ≫ 社会 ≫ 社説 ≫ 医薬品のネット販売解禁の本質とは
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アベノミクス3本の矢のうち、3本目の矢である構造改革の中心は規制緩和による成長戦略である。具体策の一つとして安倍首相は一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売について「安全性を確保しつつ、しっかりしたルールのもとですべて解禁する」と述べていた。11月12日、その医薬品ネット販売の規制に関する薬事法改正案が閣議決定されたが、その内容は市販薬の99.8%のネット販売を認める一方、医療用から大衆向けに切り替わって3年以内の市販薬は対面販売に限定。現在5品目ある劇薬指定の医薬品は、恒久的な措置としてネット販売を禁じ、処方薬も対面に限ることが明記された。
これに対し、産業競争力会議の民間議員である楽天三木谷社長は、グループ企業を通じての国に対する行政訴訟の可能性が出てくるとして、民間議員の辞任を表明した。週刊誌等などでは、三木谷氏に対して政商であるとか、医薬品のネット販売解禁を通じた経済効果などたかがしれているなどの批判もある。この医薬品のネット販売については三木谷氏が代表をつとめる経済団体、新経済連盟で行われていた議論の場に陪席していた筆者からこの問題の本質を説明したい。この問題は医薬品がどれくらいに売れるかどうかという問題ではなく、「対面」というものにインターネットを通じたやりとりをいれるか否かの問題なのである。
市販薬に関して、売り手は薬局・薬店の薬剤師である。同じ売り手の売り方において対面とインターネットを区別し続けるということが今回の薬事法改正の問題であり、この点について三木谷氏は例外を設けてはならないと論陣を張っているのである。薬事法に限らず、医師法にも「対面原則」がある。この「対面原則」によるネットへの規制というものが続くと医療面では遠隔医療などへのハードルになる。さらに医薬品についても医師の出す処方箋の薬品の販売が欧米のように通信販売が可能になれば、過度に病院に行く必要も減り30兆円を超えるという国民医療費の削減にもつながる。ネット規制派のなかには、米国における偽薬のネット販売の事例をあげる反対する向きもあるが、それは売り手に対する管理・規制の問題のはずである。
現在は医薬品の問題にとどまっているが、この「対面原則によるネット規制」は行政サービス、教育などの分野で利用者の利便性を損ない、コストの高止まりを招きかねない。ICT(情報通信技術)を活用した成長戦略は、街つくり、高齢化対策、そして新産業育成など幅広い可能性を含む重要なテーマである。表層的な新聞報道に迷わされず、きちんと筋論を主張していくことが必要であろう。
(小林 司)
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