トップページ ≫ 社会 ≫ 特定秘密保護法案は官僚の独走を引き起こす
社会
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特定秘密保護法案が今国会成立に向け、今週中に衆院を通過すべく、与党は現在民主、みんな、維新と修正協議をおこなっている。しかし、この特定秘密保護法案はかなり大きな問題を含んでいる。ただ、一部野党が言うような「なぜこの時期に制定する必要があるのか」という問題ではない。スパイ防止や国家機密保持に関する法律が我が国にいままでなかったことは、確かにおかしいことであった。初代内閣安全保障室長佐々淳行氏が外事警察として「スパイキャッチャー」であった頃を振り返った著書(「謎の独裁者・金正日」)にも、外国のスパイを捕まえても(諸外国では死刑の可能性もあるところ)裁く法律がないために決まって懲役1年・執行猶予3年という判決で国外退去になってしまう歯がゆさが描かれている。
だから国家の安全保障上、いわゆるスパイ防止法を早急に制定する必要があるのだが、今回この特定秘密保護法案が制定される背景としては2010年に沖縄県の尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件の記録映像流出を機に、機密保持に対する法整備の必要が認識され、このたびの国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案の審議にともない、機密保全の強化で外国から情報を得やすくするということである。
しかし、今回の特定秘密保護法案は問題点が多い。
主な点は以下の3つである。
1、 「特定秘密」の範囲が不明確である
2、 罰則が国家公務員だけでなく、報道や一般国民にまで及ぶ可能性がある
3、 特定秘密が永久に公開されない可能性がある
「特定秘密」の範囲ということについては「特定有害活動の防止に関する事項」という項目があり、非常にあいまいで指定する側の独断で決めることができる恐れがある。小池百合子元防衛相の「首相動静」について、「国民の『知る権利』を超えているのではないか」という発言はまさにその不安を助長させるものである。
罰則については「特定秘密」を漏えいした公務員だけでなく、教唆や煽動したものも対象になっている。これが報道の自由への侵害はもちろん、一般人をも処罰の対象にする可能性が出てくる。1972年の沖縄返還に伴う日米密約文書を外務省事務官から入手した西山事件のようなケースも「著しく不当な方法」による「特定秘密」の入手として処罰対象になると、森雅子担当相は国会で答弁している。取材方法について恣意的に判断できるということは、独自取材に対して萎縮をさせ、結果的に記者クラブに対して提供される情報のみを記事にするということになり、報道の自殺を引き起こしかねない。
情報公開については指定の期間は5年だが、何度でも延長できるため、永遠に明らかにされないこともある。さきほどの西山事件についても沖縄返還から40年以上たっても関連文書が公開されていない。いまの沖縄問題を見るまでもなく、国家の嘘が永遠に明らかにならないのは、結果的に後世の国民に対してツケをまわすことなのである。適切な時間を経て情報が公開されるということが秘密指定をする行政側に対する唯一の牽制機能である。米国では中立的な立場から秘密解除を審査する情報保全監察局というものが存在している。
冒頭で述べたとおり、国家の安全保障上、機密保持に関する法律は必要である。しかし機密保持を盾に行政側が恣意的に情報をコントロールするという仕組みは、戦前の弾圧立法などにつながった官僚の独走を引き起こしかねない。後から振り返った時に、今国会が立法府の自殺だったと言われないように本法案は審議未了にし、慎重にそして丁寧に国家機密の保持法案を議論してもらいたい。
(林 智守)
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