トップページ ≫ 社会 ≫ 逆境の中で立ち上がる若者たち-埼玉biz garden
社会
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豊かな時代に生まれ、失われた20年と呼ばれる時代の中で育った20代の若者たち。子どもから大人になること、学生から社会人になることは、いつの時代にも厳しさが伴うが、彼らほど過酷な世代もなかったのではないだろうか。不況による就職難。希望しても就職できずニートやフリーターになる者もいる。正社員ではなく契約社員、派遣社員として働く者もいる。また、社員として就職することができても企業の採用抑制から同期や近い年齢の先輩がいない職場で苦労することもある。
このような環境の中で、同じ世代でつながり、その輪を広げ、互いに学び成長しようとする者がいる。「埼玉biz garden(ビズガーデン)」と呼ばれるコミュニティに参加する20代の若者たちだ。昨年の5月に会を始めた時の参加者は、わずか3名。しかし、次第にその輪が広がり、参加者は毎回20~30名集まるようになった。約1年半を経過して累計で1,300人を超える活動となった。
11月17日(日)8:00-。彼らの活動を見学するために、大宮駅前のビルの7階 コワーキングスペース7F(ナナエフ)を訪れた。73回目の開催。今回は11名が参加した。まず、最初に自己紹介。常連もいれば初めて来た者もいる。サラリーマン、システムエンジニア、カメラマン、複写機のエンジニア、銀行員、OL、フリーランス、学生、仕事の他に地域での活動を計画する者等職種も経歴も様々。次に、テーブルトーク。3、4人でグループになって順番にテーマに沿った話をする。初参加の女性も常連に交っていきいきと話していた。電子化、ペーパーレス化をしたい経理担当とコピー機を作るエンジニア、独立願望のあるOLとすでに独立したフリーランス等、偶然からの興味深い組み合わせが生まれ、ディスカッションは大いに盛り上がった。会の終盤では、参加者は各自の“マイコミ”をボードに書いて発表する。マイコミとは、マイコミットメントの略で「成長するために自分に約束すること」だ。
例えば、「将来作家になる。そのために来週は本を5冊読む」のような具体的な目標を立てて、それを宣言することで実現のための意思は強くする。「公務員試験に合格すること」「恩師や就職活動でお世話になった人にあいさつすること」など様々なマイコミが発表された。「結婚に向けて式場を探す」というマイコミが発表された時には、会場はあたたかい雰囲気に包まれ、全員が祝福をした。最後に全員で記念撮影をして会は終了だが、うちとけた仲間同士の会話、活動はその後も続く。埼玉biz gardenからスピンアウトして作られたカメラ部は近くに場所を移してカメラをみんなで楽しむイベント。メンバーの中のプロのカメラマンが指導する。他にも朝会で知り合った者同士でジョギングや料理、読書等の愛好会が作られている。アパレルの仕事をするメンバーからは来週の朝活終了後に「靴磨き教室」を開くことも発表された。若者がつながることで活動が次々に広がっていく。
この埼玉biz gardenが多くの若者に支持されるのは3つの理由がある。一つはコミュニティの開催を朝にしていること。休日に朝少し早く起きることでコミュニティに参加することができ、1日を有意義に過ごすことができる。また朝という時間だからこそ意識が高い人が集まる。意識が高い参加者が集まることで活動の質が担保される。二つ目は、SNSサービスフェイスブックの活用だ。フェイスブックを通じてbiz gardenが情報発信をするだけでなく、参加者が自分のフェイスブックコミュニティに朝活について投稿することで、そのコミュニティのメンバーにもbiz gardenの活動が知られる。今回初めて参加した女性は別のフェイスブックコミュニティから活動を知り参加したと言う。3つ目は運営の力だ。
代表を務める渡辺一城氏は、現在システムエンジニアとして仕事をしているが過去に大きな挫折を味わったことがあった。大学を卒業してソフトウェア会社に就職し3年半で起業を志し退職した。しかし思うように会社を立ち上げることができず、貯金も尽きて住むところも食事さえもままならない状況になったという。渡辺氏は「その時にいろいろな方に助けてもらった。メンターとも言える人生の師との出会いもあった。人脈、人とのつながりで今日の自分がある。人と人とのつながりをつくることで何か貢献できないかと考え現在のコミュニティ運営を始めた」のだと言う。
また、運営者の1人荻嶋義章氏は、ファッション関係の販売員を5年間勤めるが昇進のタイミングで悩み退職。仕事を失うが、派遣会社㈱アウトスタンディングの販売員として社会復帰。その後2010年1月からWebサイト「若者夢カレンダー」の撮影を開始。毎週末街角に立って3年間で1,000人以上の若者の夢のスナップショットを撮影したという。この活動が社内で認められ、派遣社員から異例のカメラマン社員に登用された。挫折を経験したからこそ、人と人の縁の大切さがわかる。コツコツと継続することの大切さがわかる。彼らは朝会の進行においては参加者と同じ立場で自分について語り、参加者から出てくる意見やアイディアに耳を傾ける。参加者が主役になるコミュニティ運営ということを徹底する。そんな運営者の人柄に多くの若者が共感するのだ。
渡辺氏は今後の目標として朝活のようなイベントコミュニティの運営について、運営者同士でノウハウを提供し合うこと、運営を仕組み化して多くの人にできるようにすることを考えているという。
埼玉県では、若者の就業支援プロジェクトとしてヤングキャリアセンター埼玉と若者自立支援センター埼玉を拠点として、若者の就業支援に取り組んでいる。ハローワークと連携した企業の紹介や就業に役立つスキルを若者に身につけさせることももちろん必要だ。しかし、自ら求めて仲間を作ること、その輪を広げること、学ぶことは一生を通じて必要なスキルだ。就業支援や生涯教育という分野において、行政も彼らと交流を持ち、学ぶことも多いように思う。
厳しい環境の中、挫折から立ち上がることから始まった彼らの活動。若者がその人とつながる力で社会の活力となることを大いに期待している。
埼玉ビズガーデンは毎週日曜午前8時~9時40分。
場所や参加申し込みの方法など問い合わせは公式サイト
(http://www.saitamabizgarden.com/wp/)へ
(三津橋 真也)
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