トップページ ≫ 社会 ≫ 「江沢民(中国元主席)」に逮捕状報道に対する所感
社会
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11月21日の読売新聞が報じたところによると、スペインの全国管区裁判所は1980~90年代、チベットでの「集団殺害」容疑で江沢民元国家主席、李鵬元首相ら元政権幹部5人逮捕状を出したと発表したそうで、スペイン当局によると捜査は困難とみられるものの、江沢民らが訪欧した場合には渡航先で身柄を拘束する可能性があるという。江沢民らに対しては2006年、スペイン国籍を持つ亡命チベット人や支援団体が、チベットで拷問や殺害など組織的な人道犯罪を行ったとして告発していたと伝えている。これに対し、中国外交部は「事実ならば、強烈な不満と断固たるは反対を表明する」と反発しているが、この問題で中国が反論を繰り出せば繰り出すほど、大騒ぎになればなるほど、中国が抱えるアキレス腱であるチベット人やウィグル人達への度を超えた抑圧政策が広く世界中に知れ渡ってしまい、軍によって強圧的に沈静化させていたチベット問題が広く国際社会の関心を呼び起こし、辺境で貧しい暮らしを強いられているチベット人への同情を誘い、さらには弾圧し続けて根を絶った筈のチベットの分離独立運動が再燃するのを恐れているからである。だから、こんな国辱的な報道であるにも関わらず、静かに音なしの構えなのだろう。しかし、まあ中国相手にスペインもよくやるものである。アフリカの独裁国家ならばいざ知らず、言論の自由が確立された、れっきとした民主国家の司法当局が国内法に則って突きつけたのだから驚きもひとしおである。云うまでもなくスペインの歴史は古い。英国が覇を唱える前の世界の覇者であり、いまでもメキシコから中南米、南米にかけて大きなスペイン語圏を形成し、世界中に広がるスペイン文化の宗主国であるし、スペインの国際的な影響力はまだまだかなりの物がある大国なのだ。そんな国がいろいろな証言に基づいて下した判断であり、重大な示唆に富んだメッセージである筈なのだが、わが国での反応は驚くほど低い。おりしも前日の20日からNHKテレビが午後7時30分の「クローズアップ現代」で連夜にわたり「中国の模索(①民衆の不満が噴出②大国の外交どこえ)」と題し国谷裕子キャスターを現地に送り込んだレポートを流していたが、最初は、かなり中国に批判的だったのだが次第に論調を弱め、なあなあの番組になってしまったのは大変残念だったが中国に対する日本メディアの本質を改めて見せ付けられた感じであった。放送内容も中国政府官僚の資産を公開するよう求める市民たちが公安の目を逃れ秘密で開いた会合の場面を取材していたが、登場人物にモザイクをかけただけで、はたして、この程度の配慮で中国の公安からこの市民たちを守りきれるのか甚だ疑問に思えた。生の記録媒体を抑えられれば一巻の終わりなのである。関係者は一網打尽となってしまうのである。中国の公安当局が反政府的などんな動きに対しても神経を尖らせ、ましてや民主化へ向けての活動など絶対に許さない断固たる姿勢で対処している事に日本人はまったく無神経なのである。わが国では想像がつかないくらい情け容赦無い峻烈な取り締まりが行われている事への配慮が皆無なのである。まあ、NHKの認識がこの程度なのだから、一般人の認識なんて知れたものかもしれないが、少なくとも、中国が巨大な警察国家だと言う認識だけは日本人がすべからく知っておかなければならないと思っている。仮にこの取材が当局の介入を受けたならば、記録媒体から割り出された人物は全て監獄行きとなってしまい、二度と再び一般社会へ復帰する道が絶たれてしまうのが現在の中国である。国家体制を維持するためにはどんな手段でも取るのが基本方針である。いきなり飛び出してきた「防空識別圏」だって、天安門突入など頻発する騒擾事件によって、国民の不満がさらに高まるのを警戒して国内引き締めのために、日本敵視政策を一段階エスカレートさせているとの見方もあるくらいなのだ。中国が特殊な政治システム下にある国家である事を常に忘れてはならないし、この認識だけは日本人全員が共有していた方が良いと願っているのだが。
( 仁 清 )
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