社会
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さる11月25日セゾングループの創業者堤清二氏が死去した。セゾングループは西武百貨店を中核にした流通系企業グループで、西友、パルコ、無印良品、LOFTなどの商業施設だけでなく、今年閉業したホテル西洋銀座でも売上を宴会に頼らない宿泊のみの小規模高級ホテルといった新しい価値を1980年代に提供してきた。広告面でも糸井重里作のキャッチコピー「おいしい生活」など、当時の新進気鋭のクリエイターを起用していった。
日本社会にとっても1970年後半から80年代初頭は、「大量生産・大量消費」から「多品種少量生産」へと高度消費社会への移行期であった。それは消費というものが文化的な意味を持つようになるタイミングで、それを先導したのがセゾングループであったことは疑う余地がない。とくにパルコではミックス型フロア構成のもと若者文化やアートとの協調で反響をよび、無印良品ではプライベートブランドという非ブランドを消費者の声をとりいれながらブランドにまで昇華させ、LOFTはこだわりの生活雑貨の先駆けになった。セゾングループはいまでは当たり前になっている小売り形態を切り開いてきたパイオニアだったのである。
浦和駅東口にもパルコがあり日々お客でにぎわっているが、現在の株主は大丸と松坂屋のJフロントリテイリングである。これは平成不況や不動産バブル崩壊などによってセゾングループが解体されたためで、現在「セゾン」の冠をもっている企業はクレジットカード会社のクレディセゾンのみである。セゾンカードの発行会社しているクレディセゾンは、月賦百貨店の緑屋という会社を西武百貨店が買収されたことがその沿革である。西武百貨店からクレディセゾンに移った現社長の林野氏は埼玉大学出身と埼玉に浅からぬ縁を持っている。
ところでセゾングループの「セゾン」の由来は、堤清二氏が世界的な高級ホテルで有名なフォーシーズンホテルの最高級のおもてなしを売り場で実現したい思いから、フォーシーズンつまり「四季・季節」をフランス語にしたものだ、ということを筆者はクレディセゾンの幹部役員から直接聞いた。セゾンの名称が取り入れたのは1983年。2013年の流行語に選ばれた「おもてなし」を30年前に実現しようとした男が今年逝った。なんとも人知を超えた縁(えにし)を感じるものだ。
(林 智守)
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