トップページ ≫ 社会 ≫ 輝き続ける「吉永小百合」を見たか
社会
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ここのところ、明るい話題が少ない。
北朝鮮での忌まわしい出来事。猪瀬都知事の辞任。餃子の王将社長の射殺事件。どれも衝撃的な内容なので、それまで話題となっていた特別秘密法案などは何処かに吹っ飛んでしまった感じであるが、まあ、しかし、ひとつくらいはいい話もあるもので、往年のサユリスト達にとっては願っても無い吉永小百合の最新作が公共の電波に乗った事である。
ご覧になった方も多いと思うが、吉永小百合が主演する「北のカナリアたち」が12月15日(日)の夜にテレビ朝日で放映された。この映画の評判はあまり高くないようで、劇場での興行成績もあまりよくなかったのだろう。製作からいくらも経たない内のテレビ放映に、あれ、あれ、どうしたんだろう。そんなに出来が悪かったんだろうかと思いながらチャンネルを合わせたが、どうして、どうして、映画全体の評価はそれぞれ見る角度によって意見の分かれるところだろうが、吉永小百合の出演した100本以上の映画の中でも、これは代表作にランクされるのではないかと言えるほど感情のこもった素晴らしい演技を見せている映画であった。
簡単に紹介すると名画として名高い「二十四の瞳」のリメークである。舞台を小豆島から礼文島に換え、高峰秀子が演じた小学校教師の役を吉永小百合が演じているのだが、両映画ともに全編が子供たちの歌声に包まれている点は共通するが「二十四の瞳」は瀬戸内海の明るい雰囲気の中でメロディーと風景とストーリーとが絶妙にマッチした反戦映画になっていたのに対して「北のカナリアたち」は、利尻富士を中心とした北海道の絶景にも関わらず、全体的に風景場面が暗く重い感じで、いまいちメロディーとマッチしない感じであった。さらに、目まぐるしいサスペンスの展開により、美しい景観が印象に残らないようになってしまっている事が否めない感じである。
ストーリーは元小学校教師「はる」役の吉永小百合が殺人事件の容疑者となった教え子を探して、かつての教え子達のひとりひとりと再会してゆく人間に寄り添ったヒューマンドラマである。
教え子たちは、「はる」にとっては特別な存在であった。北海道の北のはずれにある礼文島にある小学校の分校で受け持った生徒たちであり、教職を辞めるきっかけとなった事故に居合わせた子供たちだったからだ。再会を通し、事件と20年前の事故の真相が明かされてゆく。教え子の役は宮崎あおい、小池栄子、満島ひかり、勝地涼、松田龍平、森山未来の若手実力派。吉永小百合の夫役に柴田恭兵、恋人役の警察官に仲村トオル、父親役に里見浩太郎を配し、坂本順治がメガホンを取っている。
島を追われるように姿を消した「はる」の複雑な思いを吉永小百合がしっかりと演じていて見応えのあるシーンの連続であった。順風満帆とは言えないその後を送る教え子と恩師が心を通わせた合唱に取り組むラストシーンには胸を締め付けられる。こんなにも切ないけれど希望にも満ちた合唱はそうはないだろう。しみじみ映画ってほんとうにいいものだなぁと思ったものである。
映画全体を通して北海道の美しい自然景観が映し出されていたのだが、サロベツの原野一面に咲き誇る黄色い蝦夷キスゲをバックにしたシーンは北京オリンピックを演出したチャン・イーモウ(張芸謀)監督の「初恋の来た道」を思わせる映像であった。また、長期ロケによるせっかくの自然風景の画像が必ずしもストーリーと一体化していないように思えたのも残念であった。
ひたむきな吉永小百合が生来持っている篤実な心を、この映画の台詞と所作の中で垣間見られたのは感動であったし、女優として今が全盛期ではないかと思えるほど存在感があった。
これが野球やサッカーの放送ならば視聴者の反応がメディアによって即座に報じられるので世間に与える影響も判るのだろが、この映像による社会反応はどんな具合なのかを知りたい気分でもあるが、まあ、映画と言う単発番組なので仕方ないのであろう。吉永小百合はけっして過去の人では無い。このあと何本の映画に出演するのか判らないが、今後の作品でも吉永小百合の最大の資質である、まじめで、ひたむきで、心から優しい、こんな人柄をさらに活かせるような企画に恵まれるよう祈って止まない。
( 仁 清 )
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