社会 …社説
筆者が在学した学部には3、4年の専門課程で専門外書講読という授業が唯一の必修科目として存在していた。そこで、筆者は交通経済学の中条潮先生による外書購読の授業を運良く受けることができた。そこで教わった言葉にハブアンドスポーク(Hub and Spoke)という輸送に関する専門用語があった。
ハブアンドスポークとは自転車の車輪から由来していて、車軸(ハブ)を中心に外周の車輪に向かっている鉄棒(スポーク)をイメージした中心拠点と放射状の輸送路からなる物流ネットワークのことである。これはFedExが始めた輸送形態で、各拠点間での物流を一旦中心となる拠点に集め、その後各拠点に輸送するというやり方を導入し物流を効率化した。それが旅客分野に波及し、航空会社は飛行機や整備工場を中心拠点に集約することにより効率的な経営を進めてきた。余談だが、LCC(ローコストキャリア)といわれる新規参入の格安航空会社は、大手航空会社のハブアンドスポークの運行ネットワークの隙間をつき、彼らにない直行便の路線を簡素化したサービスでコストダウンし、新たな需要を開拓している。
さて、さいたま市である。さいたま市は東日本のハブシティになる可能性を多いに持っているが、課題もある。スポークにあたる交通網は充実している。特に大宮駅が新幹線と在来線で同じ駅であるのは大きい。東海道・山陽新幹線はオリンピックに間に合わすという時間的な制約のため、新横浜、新大阪、新神戸などのように主要駅が在来線と同じ駅にならなかった。エコノミストの増田悦佐氏は、関西経済が地盤沈下した理由の一つとして、新幹線の駅を「大阪駅」とは離れた「新大阪駅」にしてしまったことだと指摘している。東北、上越新幹線に加え、2015年春開業予定の北陸新幹線や在来線の上野−東京ラインによって東日本だけでなく神奈川方面にもスポークが伸びる。また今年の4月からアーバンパークラインという名称になる東武野田線を通じた千葉方面の充実も期待できる。自動車道も圏央道や中央環状線の整備がすすむことによりに空港アクセスも改良される。すでに大宮−羽田空港間のリムジンバスの利用状況は好調で、昨年末には浦和—羽田空港間も開業した。
その一方、ハブとしての都市機能はどうであろう。東日本の玄関としての大宮駅の再開発、そして首都圏の行政、ビジネスの核になるべきさいたま新都心の拡充がなければ宝の持ち腐れになってしまう。一つの解決策としては容積率緩和を活用した大宮駅周辺の都市再開発だ。容積率緩和は昨年12月に成立した国家戦略特区法における規制緩和の一つになっている。この3月に決定される対象地域には間に合わないかもしれないが、容積率緩和による大宮再生は検討すべきテーマである。
(小林 司)
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