トップページ ≫ 社会 ≫ 自公連立終わりの始まり福田首相辞任後の政局
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福田首相が9月1日、内閣総理大臣を辞任することを表明した。辞任の理由は1週間たった今も明らかにされていない。が、公明党との不協和音が背景にあったことは、確実のようである。ポスト福田をめぐる自民党総裁選には麻生幹事長ほか候補者が乱立、次期首相選出後すぐ解散総選挙の態勢のようだが、福田首相辞任は自民公明の連立政権にひび割れを起こし、連立の終わりが始まったといえよう。
公明党の変化の動きは、7月初めごろから表面化した。7月2日に神崎武法前代表が千葉県市原市での党会合で「支持率が上がり福田首相の手で衆院解散となるのか、支持率低迷で福田首相がかわり、次の首相での解散となるのかわからない」と発言、公明党の福田離れを示唆した。さらに「衆院議員は常在戦場の決意で頑張っていかねばばならない」と、公明党が衆院選挙に体制を整えていることを明らかにした。そのあと、冬芝鉄三国土交通相や高木陽介選対委員長らが、自民との連立解消もあるかもしれないとも受け取れる発言をしていた。自衛隊がインド洋で給油活動をする新テロ特措法を延長する件で、臨時国会の召集時期と会期をどうするか自民党と対立した。総合経済対策でも公明は選挙に有利な定額減税を主張、財源難から消極的な自民党を押し切った。福田首相は、こうした公明党の攻勢にいやけがさしていたと思われる。辞任の意志を麻生幹事長には早くから伝えていたにもかかわらず、公明党の太田代表には記者会見で発表する30分前に伝えたことでもわかる。
このような公明党の動きの背景は何なのか。次のように、推測すればつじつまがあうといえよう。
まず、来年7月に行われる東京都議会議員選挙に勝ち党勢を拡大することに焦点をしぼった。そのためには、少なくとも都議選の6ヵ月前に衆議院選挙を行わねばならない。12月解散1月総選挙である。これを自民党にやらせるために、まず揺さぶりをかけた。続いて内閣改造で、公明とよくない伊吹幹事長に代わって選挙向けの麻生幹事長に変えることに成功した。臨時国会の会期は、新テロ特措法が参議院で否決され衆議院で再議決するには80日くらいが必要だが、公明党は再議決できない会期を主張し、自民党に認めさせた。もし、再議決のため会期を自民党が延長するなら、解散総選挙と会期延長を取引できるカードを残して置きたかった、のではないか。結果は、福田首相が辞め、11月総選挙の道を自民党に開かせた。
なぜ、公明党が都議選に固執するのか。それは、公明党の誕生の経過をみればわかる。戸田城聖氏が創価学会の第2代会長に就任したのが1951年。翌年、創価学会が宗教法人として東京都から認証された。55年の統一地方選挙には創価学会文化部から立候補させ、東京区議など全国で53人が当選した。56年には参議院で3人を当選させた。1960年に池田大作氏が第3代会長になり、61年に公明政治連盟を発足させる。この年、東京都議選で藤井富雄氏らが当選した。64年に公明党と改名、67年に衆議院で25人を当選させる。創価学会と公明党が都議選を重要視するのは、東京都が宗教法人創価学会を認証しているからである。創価学会は信徒団体だが、例外的に宗教法人として東京都が認めている。このあたりから、東京都議会で一定の勢力を持っていなければならない理由があるのである。藤井氏は都議を連続11期当選、政界や官界に顔が広い。公明党最高顧問をつとめ、自公連立政権誕生の原動力となった人である。
都議選での必勝と党勢拡大は公明党の至上命令なのだ。衆議院選挙と都議選の間になぜ半年間が必要かというと、選挙人名簿の問題がある。選挙ができる人は、住民登録してから3ヶ月間住民基本台帳に記録されたあと、初めて選挙人名簿に登録された人。名簿登録は3ヵ月ごとに行われるので、最長6ヵ月前に住民登録をしなければならない。衆院選と都議選では選挙区も違い候補者も異なる。合法的に選挙対策をするなら、半年前から対策を講じなければならない。現在の衆議院議員の任期は来年9月。任期切れの解散では都議選の2ヵ月後となり、とても間に合わない。したがって都議選とは別に選挙対策するには、来年1月選挙がぎりぎりなのである。1月総選挙なら逆に今年7月までに態勢を整える必要がある。すでに態勢を整え終わった公明党が、7月から早期解散を自民党に働きかけ、その結果、福田辞任に至ったのが背景と見られる。
次の総選挙で、自公が過半数取れず民主党を中心とする政権ができた場合、公明党はどうするのか。自民党と野党連合を組むのか。政権を担っているからこそ連立もあるので、野党になってもまだ自民党と組むことに党員は賛成しないだろう。では、民主党と連立政権をつくるのか。その可能性もないことはない。
自公で過半数をとれた場合は、どうか。現在のように3分の2の絶対多数は無理だろう。過半数すれすれの状況でも、自公連立を組むのか。政界再編成が起きた場合どのグループと連携するのか、公明党の選択肢は多くなる。
こう見てくると、自公連立の終わりが見えてくる。
志村嘉一郎(ジャーナリスト・帝京大学教授)
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