社会
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1954年3月1日、当時アメリカ合衆国の信託統治領であった太平洋マーシャル諸島において人類史上初めて水爆による被爆者が生み出されてしまった。遠洋マグロ漁船・第五福竜丸乗組員23名である。
多量の放射性降下物(死の灰)が容赦なく降り注いだ。その範囲は当初の想定を大きく超えていた。
無線長だった久保山愛吉さんがこの半年後の9月23日に亡くなっている。
第二次世界大戦以後、世界の二大超大国となった米ソはより強力な破壊力を持つ兵器を求めて、激しい開発競争を行っていた。
最初に水爆実験に成功したのはアメリカ、しかし飛行機に搭載可能な実用型兵器としての小型化に先行したのはソビエト、こうした時代の真っ只中、現代の感覚に引き寄せるとあってはならないこの事件が起こってしまったのである。
国家とは通常はおくびにも出さないが、時として激しい暴力性を示す。自身の生存権が危機にさらされているような時である。その時には民主的振る舞いなど捨て去られてしまう危険性をはらんでいる。
2009年、就任当初だったオバマ大統領のプラハ演説に於いて核兵器のない世界に言及した時、世界各国ではそれまでの時代のエートスが変わるのではとの期待が一気に高まった。あれから5年、21世紀型帝国主義とも言われる大国間のせめぎ合いの中、その期待は雲散霧消してしまった。大国の理屈においてはその力の源泉としての核兵器の存在意義は厳然としてかつ揺るぎ無く存在し続けている、と世界中で受け取られているからである。
東京都江東区夢の島に第五福竜丸展示館はあり、先日訪れてみた。
昭和42年に廃船となった後、埋立地に捨てられてしまっていた船の展示を中心に据えて、原水爆による惨禍を再び引き起こすまいとの想いで建設された施設である。こうした形で現存した船そのものが未来に期待される、核兵器のない世界のシンボルとして、現実に存在している事には意味がある。時として実体は幾多の理念・理想より、人を動かすエネルギーを秘めているからである。
喧騒とは程遠い静かな施設だが、一度は見ておく価値がある場所だ。
今を積み重ねた先に未来があるとするならば、未来を見据えて印す今の一歩もまた、かけがえのない物であろう。過去を知りたいという欲求は未来への架け橋となる。また積み重ねる事によって未来は変わると信じている。
(小松 隆)
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