社会
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日本維新の会が分党することとなり、石原代表はテレビでいみじくも、千昌夫の歌じゃないが「別れる事はつらいけど、しかたがないんだ君のため」とその心情を石原節で披露し、都知事の頃より橋下徹を評価して期待していたと語った。彼との出会いは人生の快事であった、袂を分かつことは残念だが国のための選択をしたと複雑な胸中を明かしていた。石原の橋下徹に対する異常な思い入れは、かって、都立高校の卒業式で国旗掲揚に背を向けた教員の処罰を巡って、都教組の猛烈な反発を受けてしまい、やっと法廷闘争で決着をつけた苦い経験が下敷きとなっている。橋下徹は府知事就任と同時に教育委員会の改革に手を付け、猛反発する府教組を相手に一歩も引かず、選挙結果が民意だとして見事に府教組を切り捨ててしまったのだが、この快挙にプライドの高い老政治家はいたく感心し、彼こそが混迷している政治の申し子であると直感したようだ。稀代の使い手である橋下の手法が必ず時代を拓いてゆくだろうとの思いが脳裏に刷り込まれてしまったのである。政治家としてはまだまだ経験の浅い未熟な橋下徹を実力以上に評価してしまった事が今回に繋がった訳である。
橋下代表の方は「自主憲法制定に対する石原さんの決意は固く、それぞれの道を進むこととなった、僕の力量のなさが原因で石原さんが好きである事は変わらず、喧嘩別れではない。石原さんはすごい人ですよ」と語ったが、このあたりは橋下の本音であろう。別れ話の原因である「結いの党」との政策協定で肝心な党内合意を得ぬまま合流を前提に事を運んだ独裁的な手法こそが、リーダー橋下の最大欠点である事にまったく気付いていないのである。周囲に気を配り、さらに清濁をも併せて呑むくらいの成長がなければ人は動かせないし、ましてや天下国家など動かせようもないのだ。
石原氏の率いる太陽の党が維新に合流したときも、橋下徹は「石原さんはすごい人」だと評していたが、今回の分党にあたっても同じ台詞を吐いた。石原氏のどこがどうすごいのかを詳しく判りやすく説明していない。感覚的な表現にとどまり現実的にどこがどう優れているのかを具体的に説明する能力に欠けているようだ。
石原氏から「大阪都構想はわかりにくい」といわれていた程で、自分だけが判っていればとの思い上がりが橋下の政治家としての芽を摘んでいるのである。唯我独尊をいつまで押し通す気なのだろうか。
小保方靖子さんと山中教授に例えると判りやすいと思う。研究者としてはまだまだ経験の浅い小保方さんは結果を明確に示せるものの、そこに至るまでの細かい説明が明文化できない状態の未熟な研究者である。一方の山中教授は、どうして結果を導き出せるかを詳細に説明できるよう長い時間をかけて明文化してある。いわば研究者としては一応の成熟をみている。こんなところだろう。
政治家だって科学者だって、どんな世界でも一人前になるには時間がかかるものである。少し前にも石原の原発容認発言に対し「民主主義のルールに従って、みんなで決めたこと(原発反対)は守ってもらいたい」と発言して石原を傷つけたが、今回の騒ぎでも石原・橋下新党以外の第三の分党は認めないとの方針に中田宏議員(前横浜市長)は「AかBか一つを選べと言うのはおかしい」と批判されているが、橋下徹の政治経験はまだまだ浅く自己研鑽も足りていない。「筋を曲げてまで違う党と合流しては有権者に対して責任が果たせない」石原慎太郎が生き残るのか、「日本のために野党再編をやらなければいけない」とする橋下徹がこれに活路を見出すのかまったく分からないが、迷い人になってしまった日本維新の会がどこへ向かって行くのか関心を持って見守っている。
( 仁 清 )
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