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「地球は先祖から受け継いだものではない。子供からの借り物だ。」これはケニアのことわざだそうだ。この心を打つ言葉で始まるパンフレットに惹かれて、6月24日から7月2日までさいたまスーパーアリーナで開催されている「わたしと地球の環境展」(http://kankyo.tenji-kai.jp/)に行ってきた。展示会に入って最初に目をついたのは、地球温暖化による環境の変化を、氷河が大幅に減って全く変わってしまった光景の比較写真で訴えるもので、問題意識がこみあげてくる。また地球温暖化以外にも水問題や生物多様性など地球環境にまつわるテーマについてもわかりやすく説明してあった。解説コーナー以外にも、アマゾンの昆虫標本や生き物をリアルに感じられるAR(拡張現実)など体験・体感できるコーナーも多数あり、足を運ぶ価値のある展示会であった。埼玉県内では7月8日から13日まで川口市の川口総合文化センターリリアで開催予定である。
この展示会の中で筆者が特に興味をもったのが、世界の環境都市コーナーで、環境に力を入れている特色ある都市を紹介していた。それは、ゴミを野菜などと交換することのによってゴミの分別収集を徹底したブラジル・クリチバ市、バイオマスを中心に50%を再生可能エネルギーにしたスウェーデン・ヴェクショー市、公共交通を乗り放題にする環境定期券で脱マイカーをはたしたドイツ・フライブルク市、原油生産国にありながら化石燃料を一切使わないゼロカーボン(脱炭素、脱二酸化炭素)のアラブ首長国連邦・マスダールシティの4都市である。それぞれの国の経済や都市のおかれている状況が違うため取り組みも一様ではないが、これらの都市の大きな特徴は環境にまつわる問題に対して、イノベーション(革新)とも呼べる実証実験に取り組んだ結果、他の都市が参考にする環境都市にまでなったということではないだろうか。
EU(欧州連合)は2020年までに再生可能エネルギーの割合を20%まで引き上げる目標を掲げていて、わが国も2020年度には約18%の目標を持っている。スウェーデン・ヴェクショー市はすでに50%に達し、約7万5千人の市民の使う電力の4割は木質バイオマスによる発電だそうだ。木質バイオマスは林業の際に出てくる木くずが原料になるので、林業の活性化にもつながる。埼玉県の県西部の都市は人口規模も同程度のこの都市を参考にして、木質バイオマスをつかった自地域への熱や電力を供給するプラント(工場)を検討してはいかがであろう。
かたや、ドイツ・フライブルク市は「地域環境定期券」によってドイツの環境首都に選ばれた。この定期券は17の交通企業が経営する鉄道、路面電車、バスの90路線が利用でき、1ヶ月券の料金は47ユーロ(約5300円)である。これにより公共交通の利用者が増加し、他の地域でも導入が進んでいる。この環境定期券を核に、パーク・アンド・ライドという市内中心部に自動車を乗り入れさせない施策と自転車の利用促進を組み合わせて排出ガスを抑えた環境都市が実現できた。
このような事例をみていくと、環境都市を目指すためには①排ガス対策の公共交通政策②再生可能エネルギーの活用③緑、河川の保全再生④リサイクル推進のためのゴミ対策、をそれぞれの都市の現状に合わせて独自の政策パッケージを作り、実行していくこと必要だと考える。もちろん行政だけでできることではなく、民間企業の理解と協力が欠かせない。そしてそれ以上に市民の理解と参加は不可欠である。その意味ですべての都市に必要なことは環境教育ではないだろうか。小学校入学前から始まり、学校教育、市民教育と一連の教育機会によって市民の環境意識が高まるのである。
(小林 司)
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