トップページ ≫ 社会 ≫ 上海の街角で「日本料理店の盛衰」
社会
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米国と中国が安全保障や経済問題を協議する「戦略・経済対話」が北京で行われた。これに先駆けて習近平政権は「アジアの安全はアジアの人々が守る」と発言してアジア新秩序の構築は中国主導でとの姿勢を国際社会にアピールしていたが、この交渉に際して米国にかなりの気遣いをみせトーンを一段と引き下げて協調姿勢を表明したのだが、その真意をはかりかねているのが米国であろう。しかし、この会談が中国の今後を占う上で重大なポイントとなる事は確かである。はたして中国政府は周辺諸国に対して、どんな戦略で応対してくるのか、その内容が我が国にとっては重大な意味合いを持つので、より慎重に見極めざるを得ないだろう。
緊張の度合いが高まり続ける日中関係なのだが、上海の街を歩いても表面上はこの影響をほとんど感じない。日本人が平穏に街を闊歩しているところは東京と何ら変わりのない光景である。しかしながら、経済活動の実態は中国離れがかなり加速していて、経済の減速による工場閉鎖や頻発するチャイナリスクを嫌って、もっと政情の安定した国の良質な労働力を求めて、発展途上にある東南アジアの国々へ避難しているのだ。ベトナム、カンボジア、さらにはミャンマーへとシフトを転換する動きが活発になってきており、これら一連の動きが上海で日本人駐在員を顧客にしている飲食店や関連するサービスに携わっている人々を直撃しているため従来からの勢力分布が大きな変わってきているのである。
十万人を超えるだろうと云われていた上海在住日本人なのだが、半分くらいに減ってしまったのではと嘆くのは日本料理店を十年も経営する日本人オーナーである。家族連れの駐在員が潮が引くようにいなくなってしまったという。上海市西部の日本租界である虹橋(ホンチャオ)地区にある老舗の日本料理屋はどこも同じようだという。店内の改装・メニューの一新・値下げ・より質の高いサービスの提供等の努力をしたがさっぱりだという。パイそのものが小さくなったのだからどんなにあがいても仕方ないよと自嘲気味である。駐在員が減っている上に接待費も大幅に削られている事も原因の一つなのだが、大都市上海の繁栄を目の当たりにして食指を動かして出店する人たちが後をたたず、次々と参入して競争が激化し生き残りを賭けたデスマッチが繰り広げられた結果でもあるのだろう。
上海はまだまだ発展途上にあり、新たに誕生する大型商業施設には必ず日本の飲食店がオープンする。トレンドなお店に駐在員達が一度行ってみたいとなっても不思議ではない訳である。暖簾の味をしっかりと守り、行き届いたサービスで温かいおもてなしで末永くご愛顧願うという日本式の経営が、この上海ではいささか趣を異にしていると言わざるを得ないようだ。中国人は飲食店経営には独特の哲学をもっている。つまり、開店から猛烈に繁盛店であるための努力と投資を惜しまない。四、五年かけてなんて悠長な事ではなく、開店と同時に全力投球で採算を度外視して繁盛店を築き上げるのである。そして誰が見てもこの店は大変儲かっているという状態に仕上げて、暖簾、料理人、従業員などの一切を含めて売ってしまうのである。投資に掛かった何倍かの値段で希望者に転売するのだ。そして儲かった金で次の投資に向かうのである。飲食店で何十年も儲けを出し続けるのは厳しいと看破し抜いているからこそである。これは中国社会では常識であり、上海も外国なのだという点を読み違えると痛い目に会うと言う例なのである。
そんな上海でも大繁盛の日本料理屋だってあるが、いずれも日本人から老舗料理店を買い取った中国人オーナーが本物の日本料理をセールスポイントにして顧客を日本人より上海の富裕層に絞って健康と安心をウリにしているもので、驚くくらいに盛っているのだが、国情の違いとは言え人と金の流れを冷徹に見極めなければと言う事なのであろう。
( 仁 清 )
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