社会
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七月末の新聞で「青春18きっぷお手頃な旅」という特集を目にした。JR全線の普通列車に乗り放題の「青春18きっぷ」は五回分(人)1セットで1万8500円。個人でもグループでも使えて一回分(人)は2370円で一日有効である。これを上手に使って、のんびり、気ままに夏の旅を楽しもうとの記事である。
元来はネーミングの通り学生や若者をターゲットにした商品であったのが、車社会の拡大や新幹線網の伸展により、列車旅への依存度が急速に薄れ、この変転に併せるように旅行も新幹線か飛行機というスタイルがほとんどとなり、働く人達にとっては多忙な毎日から時間を捻出させなければ実現出来ないプライベート旅行からは、この時代遅れとなった列車旅は完全に見放された格好となってしまっている。
しかしながら、ここへきて団塊の世代の人たちが現役を引退し年金受給者となってどっと社会に溢れ出てきている。健康で経済的にも余裕がある人たちは、なにも大金を投じなくても有意義な時間が過ごせるようにと低廉な列車旅に楽しみを見出す層が増えているようだ。無理なく多くのルートを使って車窓や観光を楽しんだり、より安く多くの場所を廻ったり、さらには、一日でどこまで移動できるかの距離を競ったり、個々の好みによって多彩な使い分けができるとの事である。
実社会のいわば卒業生が完全にフリーな時間を生かして旅する事は大いに賛同するのだが、時刻表とにらめっこで次から次へと列車を乗り継いだり、運賃が安いからというだけで単に遠方に出かけるというだけでは、少々味気ないと思うのである。
誰しもが旅行と言うと、多かれ少なかれ時間に縛られている。飛行機や新幹線やバスの出発時間である。さらに宿泊先が旅館なら夕食時間の制限が加わる。私たちの日常生活も好むと好まざるとに関わらずいろいろな制約の中で過ごしているのだが、時間を縛られた暮らしの中で知らず知らずのうちにストレスが蓄積されてしまっているのである。
旅は日常からの開放であってこそ意義あるものと考えている。ならばと「青春18きっぷ」を使った次のような旅を提唱したいのである。
出来れば一人旅の方がいい。まあ、大まかに予算と日数だけは決めておく。タイムスケジュールも宿泊先も決めておかない。まったくの行き当たりばったりで行く。時刻表を手にして行きたい方角に向かう。小さなバッグに少々の着替え(宿泊先のコインランドリーが使える)と携帯電話と文庫本を持つ。夏旅だから出来るだけ軽装で行きたい。そして一日で楽に着ける地方都市に向かう。仙台、福島、会津若松、山形、新潟、富山、松本、静岡、浜松など何処でも好きな場所でいいのだ。鈍行列車では景色と共に乗客を観察しながら過ごす。狭い日本だが景色と共にそれぞれに違う民情が垣間見られ興味尽きない時間が過ごせる筈である。宿泊は自分が気に入った街を選べばよい。前述した位の地方都市なら必ず気の効いたビジネスホテルがある。列車内でスマートフォンで探してもいい。そして出来るだけ繁華街に近い方がベターだ。夏だから午後七時頃のチェックインで充分である。朝食付きで五千円程度で収まる筈だし平日は勿論、土日はかなり空いているので地元の大きなイベントでもない限り当日の予約で必ず泊まれる。シャワーを浴びたら近くの居酒屋へ直行だ。飲めない人も食事だけでOKだ。お店はホテルで聞き込みだ。スマートフォンで調べてもいいが人気度が若い人の価値観に偏るので注意したいところだし、ガイドブックは資料が旧くてあまりいただけない。生の情報が一番なのだ。選んだ店では地方料理と雰囲気を大いに楽しもう。そこここに楽しんでも五千円位だろうし地元客で賑わうお店なら必ずそこに何がしかの感慨が生じる事になるだろう。さらに翌日は次の街に向かうのだ。
仕事を通じ多少なりとも社会貢献を果たされた中高年の人たちが、一切の束縛から離れそれぞれが持って生まれた本来の人間性に立ち返って人生を見つめなおす時間となれば、まったく素晴らしいことではないか。お金さえあれば何でも出来ると思うのは人間の浅ましさである。お金なんか掛けなくても素晴らしい時間を過ごせるものである。旅に出て過ぎし日々を懐かしく思い出すのもいいし、今後の生活をより豊かにおくるにはどうしたらいいか、係累のいない場所こそ、独りで自分を見つめなおす機会となる筈である。さあ夏旅は本番を迎える。あなたもこんな旅に出てみませんか。
( 仁 清 )
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