トップページ ≫ 社会 ≫ 注目される「ときがわ町の森林整備」~防災対策のヒント~
社会
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異常気象で集中した豪雨により日本列島各地で浸水、河川氾濫、土砂災害など甚大な被害をもたらしている。広島市で今月20日未明に起きた大規模土砂災害では、死者は60名を超え、行方不明者も20数名と深刻な事態である。被害者には就寝中の幼い子供も含まれた痛ましい出来事であり、自然の驚異を目の当たりにした大災害である。
埼玉県は自然豊かな県として、荒川をはじめとする多くの河川や緑豊かな山林が広がっている。明治43年の大雨による土砂災害をきっかけに大正5年に砂防事務所が設立され、ときがわ町の七重川に着手したのが県の砂防事業の始まりである。土砂災害を未然に防ぐべく「砂防堰堤の設置」「流路工の整備」「擁壁」等の砂防事業を行っている。平成13年に「土砂災害防止法」が施行され、埼玉県は県の土砂災害警戒区域を指定し、危険の周知、警戒避難体制の整備、開発行為の制限などを行っている。埼玉県が平成15年に公表した土砂災害危険箇所数は「急傾斜面崩壊危険箇所2,907」「土石流危険渓流1,202」「地すべり危険箇所110」と計4,219箇所が人家や公共施設等に被害を与えるおそれがあるという。
町の面積の7割が森林というときがわ町では、「ときがわ町森林整備計画」が街全体の地形、地質を考慮した中で災害対策に向けた取り組みとして、土石流の流出防備等のために保安林の指定と管理を行っている。戦後、政府による拡大造林政策により、自然状態であった山林が人工林に変わっていった。木材価格の下落等の影響により森林の手入れが充分に行われなくなっている。人工林は本数の間引き、適度の伐採を行わないと太陽光が地面に届かず下草が生えにくくなる。そのため草の生えない土壌がむき出しの状態だと雨が降っても保水力が弱くなる。結果、山が崩壊する土砂災害を引き起こす可能性が高くなるという。ときがわ町では「ときがわ町特定間伐促進計画」を策定し、適度な伐採や森林保護を行い整備推進中であるという。しかし前述のとおり、木材利用の低下や木材価格の下落で林業事業も、ときがわ町の事業においても大規模な森林整備は補助金に頼らざるを得ない状況であるのが現実だという。ときがわ町としては建築物の内装木質化「ときがわ方式」を導入し、伐採・活用・植林というサイクルで山林の活性化を図るなど森林整備の一環として木材の利活用を推進している。
自然に囲まれた埼玉県。河川や山林部周辺の自然を求める居住地域の開発は決して安心安全とは言えないだろう。しかし県内のこういった自治体独自の取り組みが、森林整備という側面からも防災対策につながっているという一面を見逃してはならない。
(多田 清成)
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