トップページ ≫ 社会 ≫ ネット上で支持拡大する共産党 ロストジェネレーション世代の共感が集まる
社会
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「CGJ(志位グッジョブ)」 -国会質問の様子が動画サイトに
冷戦構造が終わってから、既に20年近い年月が経つ。その間、存在価値を失ってしまったかのように国会議員数を減らしてきたのが共産党だ。現在、衆議院議員は9人しかいないというから、その凋落ぶりが伺える。
しかし、その動向に大きな変化が見える。『しんぶん赤旗』のサイトによると、昨年秋以来すでに新規党員が1万人に上るという。格差社会→『蟹工船』の復権→共産党員増加と、そんな単純な図式には納得できない部分もある。
では実際はどうなのか。調べてみると、自らの不勉強を恥じることとなった。「共産党など眼中にない」という人も多いと思われるので、ちょっと紹介したい。
格差社会が広がる中、その先駆的存在でもあった『蟹工船』に注目が集まり、それをきっかけに入党した若者もいることだろう。だが、とりわけ、大きな注目が共産党に集まったのは、今年2月8日に志位和夫委員長が行った国会質問である。通常であれば、国会中継がそれほど多くの脚光を集めることは、あまり多くない。特に20代、30代が、テレビで国会中継を観戦するというシチュエーションは、想像しずらい。
ところが、志位委員長による国会質問の様子は、共産党のサイトに加え、ニコニコ動画、YouTubeといった動画サイトにアップされ、数万人が目にすることとなったのだ。ちなみに、10月7日現在、YouTubeで再生されたのは、6万8000回を超える。これらの動画サイトは、再生画面の下にどんどんコメントを書き込んでいける仕組み。そこには、「CGJ(志位グッジョブ)」などが流行語のように書き込まれ、「共産党見直したね!」的な称賛コメントの嵐となった。
福田も舛添も防戦一方、志位委員長の見事な仕事ぶり
では、実際にはどんな国会質問だったのか。遅ればせながら、YouTubeで再生してみた。雇用格差問題、派遣問題の1点に絞ったものだ。志位委員長は、リアルな数字や証言などをもとに派遣労働の実態を示し、現在の派遣法が大企業の利益のために改悪させられた悪法であることを追求していく。
日雇派遣の実態、偽装請負の実態、摘発されても進まない企業側の対応などをとにかく詳細に調査し、法律を遵守しないからではなく、法律が企業のためにあるからだという結論を誰も反論できない論理展開で導く。後半部では、約3000人の労働者のうち、直接雇用が1000人ちょっとしかいないキャノンマテリアルやキャノン長浜工場の実態を数字や証言を交え描き出した下りは圧巻である。キャノン会長であり経済諮問会議のメンバーである御手洗冨士夫・日本経団連会長の手前、防戦一方となった福田総理や舛添厚生労働大臣も最後にはある程度労働者保護に前向きな姿勢を見せざるを得なくなった。綿密に調査を重ね、根拠となる数字、派遣労働者の証言を集め、派遣法の不備と改善されない実情を徹底的に明らかにしていくというあっぱれな仕事ぶりだ。正直、お見事というしかないのだ。こうした追求は、企業献金を一切受けていない共産党ならではのものだろう。
約50分にわたる論戦のなか、共産党の質問であるのもかかわらず与党席からも野次が全く無いことにも驚かされた。その場にいた誰もが、志位委員長の描いた論理展開に引きずり込まれてしまっているかのように思えた。志位氏が導いた結論は、大手企業のために規制緩和を重ねられた派遣法を、規制を厳しくする方向に改正し労働者保護法にせよ、というものだ。派遣を増やし、コスト削減を行うことで企業は短期的には利益を増やせるだろう。しかし、やがて、社会全体の消費マインドが下がり、活力もなくなっていくと結んでいる。日本社会の持続可能な発展のためにも労働者保護法を、と訴える。
なぜロストジェネレーション世代の支持を集めたのか
この国会質問がインターネット、とりわけ動画サイトや個人のブログ上で大評判となっていたというわけだ。共産党はこれまでインターネットの世界では弱小派で、どちらかといえば「ネウヨ(ネット右翼)」と呼ばれる若者層が幅を利かせていた。では、なぜ志位委員長の国会質問はこれほどまでに若者の支持を集めたのだろう。『ブログ論壇の誕生』(文春新書・佐々木俊尚)は次のように分析している。
「ひとつは、この質問がワーキングプアに焦点を絞っていたということがある。格差社会問題は、ロストジェネレーション世代にとっては最重要課題となっている」
続けて2つ目の理由として下記を挙げる。
「追求スタイルがきわめてブログ論壇的だったということがあるだろう。ブログ論壇の世界では、1.議論の土台となるニュースソース(情報源)をきちんと提示し、2.そのソースに基づいてロジックを破綻なく積み上げていくーーという議論のあり方が強く求められる」
なるほど、この分析は的を得たものだろう。志位委員長は、感情的に陥ることもなく、誰も反論できない論理展開で政府を締め上げた。「共産主義なんて」という先入観を外して、この国会中継を見ると、日本の政治もまだまだ捨てたものではない、と思えるのは事実。将来に希望を持てないロストジェネレーション世代は、こうした政治家の存在に共感を感じたに違いない。
結局、アメリカのいいなりになるのか否かという問題
多少遠のいた感のある総選挙。自公連立VS民主党という枠組で語られるが、共産党が大幅に議席数を伸ばす可能性もありそうだ。
ところで、派遣法の規制がどんどん緩和されてしまった理由は何なのか?日本に対するアメリカの年次改革要望書の中で圧力をかけられてきたからだ。郵政民営化も大店法撤廃もすべてこの年次改革要望書の中で日本に要求されてきたことなのだ。そこに利益至上主義の大企業の論理が加わった。
先日、政府は、キャノンの御手洗冨士夫・日本経団連会長も参加している経済財政諮問会議(議長・麻生太郎首相)の民間メンバー4人を全員交代させる方針を発表した。このメンバーが小泉の日本を破壊する偽構造改革路線を推し進めたメンバーでもある。いずれ自民党は政権を下りることになるのだろうが、麻生政権がアメリカいいなりから方針転換を図ろうとしていると考えているかのようにも思われる。従来のようにいいなりになるのか、反旗をひるがえすのか。注意深く見守っていく必要があるだろう。
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